保健婦学生が災害看護論を通して学んだ保健婦・士の役割

本研究は専攻科保健婦・士学生を対象に実施した災害看護論での学生の学びを分析したものである.災害看護論の教育体系は確立されておらず,授業実施にあたり教育の目的・方法・教材を開発する必要があった.今回実施した授業の構成は,(1)VTR「阪神大震災時の保健婦活動」(発生直後から約3か月間の活動記録)を素材にした演習,(2)災害医療・災害看護の基本的事項についての講義,(3)トリアージ机上シミュレーション,(4)「避難所体制づくり」の机上シミュレーションと発表である.これらの内容を2日間,計4コマ(360分)の集中講義で実施した.授業を受けた学生を対象に学生の学びを「授業前」「授業中」「授業後」に自記...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本地域看護学会誌 Vol. 4; no. 1; pp. 120 - 125
Main Authors 小原, 真理子, 長谷部, 史乃
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本地域看護学会 2002
Japan Academy of Community Health Nursing
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN1346-9657
2432-0803
DOI10.20746/jachn.4.1_120

Cover

More Information
Summary:本研究は専攻科保健婦・士学生を対象に実施した災害看護論での学生の学びを分析したものである.災害看護論の教育体系は確立されておらず,授業実施にあたり教育の目的・方法・教材を開発する必要があった.今回実施した授業の構成は,(1)VTR「阪神大震災時の保健婦活動」(発生直後から約3か月間の活動記録)を素材にした演習,(2)災害医療・災害看護の基本的事項についての講義,(3)トリアージ机上シミュレーション,(4)「避難所体制づくり」の机上シミュレーションと発表である.これらの内容を2日間,計4コマ(360分)の集中講義で実施した.授業を受けた学生を対象に学生の学びを「授業前」「授業中」「授業後」に自記式質問紙を用いて調査した.調査項目は「既習知識」「保健婦・士の役割の捉え」「トリアージの理解」「社会的態度尺度の変化」「授業の感想」などである.授業による学生の学びは「災害時における保健婦・士の具体的な活動を理解することができた」「平時の保健婦・士活動のあり方を再認識することができた」「平時の活動と災害時の活動を連動してとらえ,災害救護や防災活動を自らの役割であると認識できた」点にあった.保健婦・士基礎教育の中で災害という1事象を考えていくことが,保健婦・士の役割や活動の原理原則的側面をとらえることにつながった.さらに単なる知識習得だけでなく実践活動につながる力を養うために,災害現場を想定したシミュレーション演習は有効であったと考える。災害時の状況を想起できるような視聴覚教材や自ら当事者として体験的に対応を考えるための教材の開発,および教授方法の確立が重要である.
ISSN:1346-9657
2432-0803
DOI:10.20746/jachn.4.1_120