高齢者における頭蓋内-脳動脈硬化の時代的推移に関する病理学的研究

日本人高齢者の頭蓋内-脳動脈硬化がこの四半世紀にどのような変化を遂げてきたかを明らかにする目的で, 3期に分けた1261剖検例より頭蓋内-脳動脈硬化を冠動脈硬化と比較し, 関連する危険因子についても検討した. 対象はいずれも当施設の連続開頭剖検例で, 剖検年次によってI (前期) 群 (1974~1975年), II (中期) 群 (1986~1987年) およびIII (後期) 群 (2000~2001年) の3群に分類した. 脳動脈硬化の評価は左右中大脳動脈, 脳底動脈で肉眼的に行い, 各動脈の硬化度を狭窄率に基づいて0~3で評価後, 3脳動脈の総和 (0~9の10段階) を頭蓋内-脳動脈...

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Published in日本老年医学会雑誌 Vol. 40; no. 3; pp. 267 - 273
Main Authors 千田, 宏司, 新井, 冨生, 村山, 繁雄, 名倉, 博史, 岩本, 俊彦, 沢辺, 元司, 小山, 俊一, 山之内, 博, 高崎, 優, 齊藤, 祐子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本老年医学会 25.05.2003
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ISSN0300-9173
DOI10.3143/geriatrics.40.267

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Summary:日本人高齢者の頭蓋内-脳動脈硬化がこの四半世紀にどのような変化を遂げてきたかを明らかにする目的で, 3期に分けた1261剖検例より頭蓋内-脳動脈硬化を冠動脈硬化と比較し, 関連する危険因子についても検討した. 対象はいずれも当施設の連続開頭剖検例で, 剖検年次によってI (前期) 群 (1974~1975年), II (中期) 群 (1986~1987年) およびIII (後期) 群 (2000~2001年) の3群に分類した. 脳動脈硬化の評価は左右中大脳動脈, 脳底動脈で肉眼的に行い, 各動脈の硬化度を狭窄率に基づいて0~3で評価後, 3脳動脈の総和 (0~9の10段階) を頭蓋内-脳動脈硬化指数 (以下, ICAI) として表した. 一方, 冠動脈硬化の評価は3枝の各々で狭窄率を0~5に評価し, 3枝の総和を冠動脈狭窄指数 (以下, CSI) とした. 平均年齢はI群 (n=484) 76.8歳, II群 (n=504) 79.4歳, III群 (n=273) 80.3歳で後期ほど有意に高く, また, III群では男性が多かった. 高血圧の頻度は後期ほど少なく, 糖尿病の増加, 平均血清コレステロール値の上昇がみられた. 平均ICAIはI群4.1±0.2, II群3.5±0.1, III群2.4±0.1で各群間に差を認め, 後期ほど低下していたが, 平均CSIに変化はみられなかった. 血圧とICAI, CSIとの間には収縮期および拡張期とも正相関 (r=0.437-0.599, p<0.01) を認め, 一方, 糖尿病を有する亜群でICAI, CSIが高く, 血清コレステロール値はCSIとのみ正相関を認めた (r=0.400-0.415, p<0.01). 多変量解析の結果, ICAIに影響する有意な危険因子として年齢, 収縮期血圧, 糖尿病が採択された. 以上より, III群で高齢者が多いにもかかわらずICAIが低かった成績は, 頭蓋内-脳動脈硬化が近年, 軽症化していることを示し, その原因の一つに血圧の関与が示唆された.
ISSN:0300-9173
DOI:10.3143/geriatrics.40.267