高齢者排尿障害に対する一般内科医向きの治療効果判定法

高齢者の排尿障害を効率良く評価・治療を行うためには, 一般内科医向きの治療効果判定基準が必要である. 近年, 国際前立腺症状スコア (I-PSS) とQoLスコア, 尿流測定における最大尿流率をパラメータとした泌尿器科医向きの前立腺肥大症に対する治療効果判定基準が作成された. 泌尿器科医が排尿障害に対し評価・治療を行った50歳以上の男性85例と女性16例に対して, この効果判定基準が前立腺肥大症のみならず, 高齢者排尿障害全般の効果判定に有用であるかどうか検討した. さらに, I-PSSとQoLスコアの改善度を用いたレベルIの効果判定法と, PSSとQoLスコア, 残尿量の改善度を用いたレベル...

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Published in日本老年医学会雑誌 Vol. 40; no. 4; pp. 352 - 359
Main Authors 長浜, 克志, 原田, 雅樹, 勝野, 暁, 安部, 崇重, 佐藤, 滋則, 宇佐美, 隆利, 川野, 圭三, 長田, 浩彦, 岡村, 菊夫
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本老年医学会 25.07.2003
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ISSN0300-9173
DOI10.3143/geriatrics.40.352

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Summary:高齢者の排尿障害を効率良く評価・治療を行うためには, 一般内科医向きの治療効果判定基準が必要である. 近年, 国際前立腺症状スコア (I-PSS) とQoLスコア, 尿流測定における最大尿流率をパラメータとした泌尿器科医向きの前立腺肥大症に対する治療効果判定基準が作成された. 泌尿器科医が排尿障害に対し評価・治療を行った50歳以上の男性85例と女性16例に対して, この効果判定基準が前立腺肥大症のみならず, 高齢者排尿障害全般の効果判定に有用であるかどうか検討した. さらに, I-PSSとQoLスコアの改善度を用いたレベルIの効果判定法と, PSSとQoLスコア, 残尿量の改善度を用いたレベルIIの効果判定法を設定し, I-PSSとQoLスコア, 最大尿流率の改善度によるレベルIIIの効果判定法による判定結果との一致率について検討した. レベルIIIの効果判定法において,「やや有効」と判断された1例は「悪化」と,「不変」と判断された1例は「やや有効」と判定したほうがよいと考えられたが, 101例中99例 (98.0%) では適切な効果判定ができており, レベルIIIの効果判定法は, 前立腺肥大症だけでなく高齢者の排尿障害全般に対する治療効果判定にも有用であると考えられた. レベルIとレベルIIIの判定結果の比較では, レベルIの「著効」・「有効」例がレベルIIIで「不変」・「悪化」と判定されることはなく, レベルIの「不変」・「悪化」例がレベルIIIで「やや有効」以上と判定されることはなかった. レベルIで「やや有効」であった35例中6例が, レベルIIIでは「不変」と判定された. レベルIIの「著効」・「有効」例が, レベルIIIにおいて「不変」・「悪化」と判定されることはなく,「悪化例」が「やや有効」以上と判定されることはなかった. レベルIIの「やや有効」の38例中11例と「不変」の35例中4例が, レベルIIIではそれぞれ「不変」,「やや有効」と判定された. 一般内科医向きの効果判定では, 初期評価では行うべきであった残尿測定は必要なく, I-PSSとQoLスコアを用いた簡便な判定法が有効であると考えられた.「著効」・「有効」・「やや有効」と判定された場合は治療を続行してよく,「不変」・「悪化」と判定された場合は泌尿器科医との連携が奨められる. しかし,「やや有効」と判定された場合には, 泌尿器科医レベルでは17%程度の症例が「不変」と判定される可能性がある.
ISSN:0300-9173
DOI:10.3143/geriatrics.40.352