WHO病期分類からみた本態性高血圧患者の交感神経刺激に対するカテコラミンの反応性
本研究においては, 年齢をマッチさせた本態性高血圧患者をWHO病期分類に従ってI期とII期に分け, 同年齢の正常血圧者と比較することにより, 高血圧の病期進展に伴う交感神経系の反応性の変化を検討した. 対象の本態性高血圧患者は121名 (男94名, 女27名) で, 正常血圧者は当教室員やボランティアである. 本態性高血圧患者は無投薬の条件下で検査を施行した. 食塩摂取量は正常血圧者, 高血圧患者とも1日120mEqとした. 正常血圧者 (NT) 33名と本態性高血圧者77名 (WHOI期患者31名, WHOII期患者46名) を対象に50度, 30分間のティルト試験を行った. 試験前後で血漿...
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Published in | 日本老年医学会雑誌 Vol. 20; no. 4; pp. 312 - 320 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本老年医学会
01.07.1983
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Subjects | |
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ISSN | 0300-9173 |
DOI | 10.3143/geriatrics.20.312 |
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Summary: | 本研究においては, 年齢をマッチさせた本態性高血圧患者をWHO病期分類に従ってI期とII期に分け, 同年齢の正常血圧者と比較することにより, 高血圧の病期進展に伴う交感神経系の反応性の変化を検討した. 対象の本態性高血圧患者は121名 (男94名, 女27名) で, 正常血圧者は当教室員やボランティアである. 本態性高血圧患者は無投薬の条件下で検査を施行した. 食塩摂取量は正常血圧者, 高血圧患者とも1日120mEqとした. 正常血圧者 (NT) 33名と本態性高血圧者77名 (WHOI期患者31名, WHOII期患者46名) を対象に50度, 30分間のティルト試験を行った. 試験前後で血漿ノルアドレナリン (NA) とアドレナリン (AD) はNT, WHOI期とII期患者ともに有意の増加を示した. WHOI期患者の血漿ノルアドレナリン増加量はWHOII期患者より有意に大であった. 一方尿中NAとADはNTとWHOI期患者において有意に増加したが, WHOII期患者ではほとんど増加を示さなかった. NT12名と本態性高血圧者24名 (WHOI期患者12名, WHOII期患者12名) を対象に4℃, 1分間の寒冷昇圧試験を行った. 血漿NAとADは3群とも有意の増加を示したが, WHOI期患者の増加量は他の2群よりも有意に大であった. 次に同一刺激に対するWHOI期患者のNA反応性の増大を明らかにする目的でレセルピン内服試験 (0.4mg, 3日間) を行った. NT10名と本態性高血圧者20名 (WHOI期患者10名, WHOII期患者10名) を対象とした. 尿中NA排泄量は無投薬の状態ではWHOI期患者が他の2群よりも有意に大であった. レセルビン内服後の尿中NA排泄量は3群とも有意の増加を示したが, 増加量はWHOI期患者において他の2群よりも有意に大であり, 交感神経末梢のNA貯臓量はWHOI期患者において増加していることが推定された. 以上の成績から本態性高血圧者の交感神経系は病期の初期においては活性化されており, 病期進展に伴い抑制されてきていることが明らかにできた. |
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ISSN: | 0300-9173 |
DOI: | 10.3143/geriatrics.20.312 |