入院患者における身体拘束に関連する要因の検討

目的:身体拘束は,紐や抑制帯を用いて対象者を椅子やベッドに縛ることや,ミトンやベッド柵などを用いて,対象者の動きの自由を制限することと定義される.拘束に関しては,様々な問題が指摘されているが,身体拘束を予測する,もしくは,解除や減少に繋がる変数が確立されていないことが問題として挙げられる.本研究の目的は,急性期病院に入院中の脳卒中患者を対象に,身体拘束実施の有無で患者特性を比較し,身体拘束に関連する要因を抽出することである.方法:対象は,2014年8月~2015年9月において,A病院における脳卒中入院患者約500名の内,リハビリテーション介入がなされた患者253名を対象とした.変数は,年齢,性...

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Published in日本老年医学会雑誌 Vol. 56; no. 3; pp. 283 - 289
Main Authors 鈴木, 久義, 齋藤, 甚
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本老年医学会 25.07.2019
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ISSN0300-9173
DOI10.3143/geriatrics.56.283

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Summary:目的:身体拘束は,紐や抑制帯を用いて対象者を椅子やベッドに縛ることや,ミトンやベッド柵などを用いて,対象者の動きの自由を制限することと定義される.拘束に関しては,様々な問題が指摘されているが,身体拘束を予測する,もしくは,解除や減少に繋がる変数が確立されていないことが問題として挙げられる.本研究の目的は,急性期病院に入院中の脳卒中患者を対象に,身体拘束実施の有無で患者特性を比較し,身体拘束に関連する要因を抽出することである.方法:対象は,2014年8月~2015年9月において,A病院における脳卒中入院患者約500名の内,リハビリテーション介入がなされた患者253名を対象とした.変数は,年齢,性別,身体拘束,向精神薬,手術,留置チューブ,脳卒中重症度,認知機能,運動麻痺,ADL自立度,行動障害などの情報を収集した.解析は,Studentのt検定,Fisherの正確検定にて各群間における変数を比較した.また,拘束の有無を従属変数,その他の変数を独立変数とし,ロジスティック回帰分析にて各変数の影響度を検討した.結果:253名の患者(非拘束群179名,拘束群74名)が分析の対象となり,拘束実施率は29.2%であった.二群間の比較では,年齢,HDS-R,NIHSS,手術,留置チューブ,意識障害,上肢麻痺,下肢麻痺,ADL自立度,行動障害,向精神薬において有意差を認めた.また,ロジスティック回帰分析の結果,年齢,HDS-R,NIHSS,行動障害が拘束の実施に強く影響していることが判明した.結論:身体拘束には,高齢,認知機能低下,重症脳卒中,行動障害が拘束実施の要因になり得ることが示唆された.また,身体機能よりも,安全管理などの判断に関わる認知機能の影響が大きいことが推察された.
ISSN:0300-9173
DOI:10.3143/geriatrics.56.283