地域在住後期高齢者における新型コロナウイルス感染症拡大に伴う活動量の変化とその関連因子についての検討
目的:新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防ぐため,我が国では2020年4月から5月にかけ緊急事態宣言が発令され,外出自粛や人との接触を減らすことが奨励された.これにより,特に高齢者の心身機能への影響が懸念されたため,後期高齢者を対象に,活動量の主観的な変化について,年代,地域別に把握すること,またその関連因子を検討することを目的とした.方法:高齢者長期縦断疫学研究(SONIC研究)に参加している地域在住高齢者に郵送アンケート調査を実施し,自粛期間中(4,5月頃)の活動量,やる気の低下等について尋ねた.活動量減少についての集計を年齢コホート・地域別に行い,活動量減少に関連する要因についてロジス...
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Published in | 日本老年医学会雑誌 Vol. 58; no. 4; pp. 591 - 601 |
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Main Authors | , , , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本老年医学会
25.10.2021
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Subjects | |
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ISSN | 0300-9173 |
DOI | 10.3143/geriatrics.58.591 |
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Summary: | 目的:新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防ぐため,我が国では2020年4月から5月にかけ緊急事態宣言が発令され,外出自粛や人との接触を減らすことが奨励された.これにより,特に高齢者の心身機能への影響が懸念されたため,後期高齢者を対象に,活動量の主観的な変化について,年代,地域別に把握すること,またその関連因子を検討することを目的とした.方法:高齢者長期縦断疫学研究(SONIC研究)に参加している地域在住高齢者に郵送アンケート調査を実施し,自粛期間中(4,5月頃)の活動量,やる気の低下等について尋ねた.活動量減少についての集計を年齢コホート・地域別に行い,活動量減少に関連する要因についてロジスティック回帰分析を用いて検討した.結果:有効回答が得られた1,785名(回答率75.2%)のうち,分析対象者は70歳コホート753名,80歳コホート496名,90歳コホート293名の計1,542名であった.活動量が減少したと回答したのは70歳コホートで68.1%,80歳コホートで65.3%,90歳コホートで56.0%,地域別には都市部で69.4%,非都市部57.7%であった.活動量減少にはやる気が起きないことと新型コロナウイルスへの不安が強く関連したとともに,70歳・80歳コホートでは都市部で活動量減少が多かった.90歳コホートでは地域の影響は減弱し,経済状況にゆとりがないことと2年前の歩行速度1 m/s以上であることが活動量減少に有意な関連を認めた.結論:活動自粛に伴う影響は年代,地域で異なっていた.コロナ禍での生活不活発による健康への悪影響を予防するためのアプローチは都市部においてより重要性が高いことが示唆された.また,90歳以上の超高齢群では元の身体状況や経済状況など70,80代とは異なる要因が活動量低下に関連することが明らかとなった. |
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ISSN: | 0300-9173 |
DOI: | 10.3143/geriatrics.58.591 |