機械刺激による細胞の形づくり 機械刺激の受容から応答へのシグナルフロー

1. はじめに:細胞の形をきめる分子 生体の構成要素である細胞の形はバラエティに富み状況に応じて変幻自在にみえる. いったい細胞の形はどのようにつくられるのであろうか? ここでは接着性を有する一般的な細胞の形に注目してみよう. 細胞を低密度で培養すると, 多くの場合, 多角形の不規則な形状を示す. その細胞膜を蛍光色素で染色して縦断面を共焦点顕微鏡で再構成すると, 核の位置を頂点として皿をかぶせたような形になっているので, ここには特別な構造はなさそうである(図1a). すなわち培養細胞ではx-y面上の2次元の形が問題である. 培養細胞をトリプシン等で処理すると, 細胞は基質面からはがれてきれ...

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Published in生物物理 Vol. 40; no. 1; pp. 31 - 37
Main Author 曽我部, 正博
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本生物物理学会 25.01.2000
日本生物物理学会
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ISSN0582-4052
1347-4219
DOI10.2142/biophys.40.31

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Summary:1. はじめに:細胞の形をきめる分子 生体の構成要素である細胞の形はバラエティに富み状況に応じて変幻自在にみえる. いったい細胞の形はどのようにつくられるのであろうか? ここでは接着性を有する一般的な細胞の形に注目してみよう. 細胞を低密度で培養すると, 多くの場合, 多角形の不規則な形状を示す. その細胞膜を蛍光色素で染色して縦断面を共焦点顕微鏡で再構成すると, 核の位置を頂点として皿をかぶせたような形になっているので, ここには特別な構造はなさそうである(図1a). すなわち培養細胞ではx-y面上の2次元の形が問題である. 培養細胞をトリプシン等で処理すると, 細胞は基質面からはがれてきれいな球状の浮遊細胞になる. 逆に考えると, 細胞と基質の間に存在する接着構造 (細胞接着斑といい, 細胞の足場である) の2次元分布が細胞の形を決めているようである. 実際, 接着斑タンパク質を蛍光標識して観察すると, 細胞の縁に添って接着斑が斑点状に分布する様子がわかる(図1b).
ISSN:0582-4052
1347-4219
DOI:10.2142/biophys.40.31