顎口腔ジストニアに関連した下顎偏位の治療経験
患者は33歳の女性で,閉口障害を主訴に当院救急診療部を受診し,右側顎関節前方脱臼の診断で脱臼の整復処置が行われた。再度脱臼が自然発生したため,当科へ対診となった。初診時,仮面様顔貌が認められ,下顎が左側に偏位し,さらに小刻みに振戦していた。最大開口量の測定は困難であった。パノラマ顎関節4分割モード撮影を行ったところ,右側の下顎頭は関節結節の前方にわずかな逸脱を認めた。一方,左側の下顎頭は下顎窩の中央部に位置していた。既往歴に関しては,統合失調症,不眠症,パーキンソン症候群および悪性症候群があり,服用薬は非典型抗精神病薬および睡眠薬であった。顎口腔ジストニア(下顎偏位型)と診断した。外側翼突筋下...
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Published in | Journal of the Japanese Society for the Temporomandibular Joint Vol. 29; no. 1; pp. 10 - 15 |
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Main Authors | , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本顎関節学会
2017
The Japanese Society for Temporomandibular Joint |
Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 0915-3004 1884-4308 |
DOI | 10.11246/gakukansetsu.29.10 |
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Summary: | 患者は33歳の女性で,閉口障害を主訴に当院救急診療部を受診し,右側顎関節前方脱臼の診断で脱臼の整復処置が行われた。再度脱臼が自然発生したため,当科へ対診となった。初診時,仮面様顔貌が認められ,下顎が左側に偏位し,さらに小刻みに振戦していた。最大開口量の測定は困難であった。パノラマ顎関節4分割モード撮影を行ったところ,右側の下顎頭は関節結節の前方にわずかな逸脱を認めた。一方,左側の下顎頭は下顎窩の中央部に位置していた。既往歴に関しては,統合失調症,不眠症,パーキンソン症候群および悪性症候群があり,服用薬は非典型抗精神病薬および睡眠薬であった。顎口腔ジストニア(下顎偏位型)と診断した。外側翼突筋下頭の持続的な過緊張を一時的に緩和させる目的で,Gow-Gates下顎神経伝達麻酔を施行した。続いて,下顎偏位および再脱臼の防止策として,顎間および顎外固定を施行した。翌日,固定は解除され,その後,患者の通院している診療内科で内服調整が行われた。6か月を経過した現在まで下顎偏位および再脱臼は認められない。Gow-Gates下顎神経伝達麻酔は下顎の偏位抑制に有効であった。顎間および顎外固定は下顎偏位および脱臼の再発防止に役立った。 |
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ISSN: | 0915-3004 1884-4308 |
DOI: | 10.11246/gakukansetsu.29.10 |