後期高齢者に対する腎生検の安全性と有用性に関する検討

目的:後期高齢者に対する腎生検の安全性と有用性を検討する.方法:2008年1月1日から2018年12月31日までに島根大学医学部附属病院腎臓内科で腎生検を実施した後期高齢者52名(男性29名,女性23名)を対象とし,腎生検の安全性と有用性について後ろ向きに検討した.結果:腎生検の適応理由はネフローゼ症候群が22例で最多であった.ついで急速進行性糸球体腎炎(12例),無症候性の検尿異常(12例)であった.病理診断は膜性腎症が12例で最多であり,ANCA関連腎炎(8例),微小変化型ネフローゼ症候群(6例),膜性増殖性糸球体腎炎(5例),IgA腎症(4例),糖尿病性腎症(3例)であった.臨床診断と病...

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Published in日本老年医学会雑誌 Vol. 58; no. 3; pp. 453 - 458
Main Authors 田邊, 一明, 大庭, 雅史, 吉金, かおり, 星野, 祐輝, 川西, 未波留, 江川, 雅博, 伊藤, 孝史, 福永, 昇平
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本老年医学会 25.07.2021
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ISSN0300-9173
DOI10.3143/geriatrics.58.453

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Summary:目的:後期高齢者に対する腎生検の安全性と有用性を検討する.方法:2008年1月1日から2018年12月31日までに島根大学医学部附属病院腎臓内科で腎生検を実施した後期高齢者52名(男性29名,女性23名)を対象とし,腎生検の安全性と有用性について後ろ向きに検討した.結果:腎生検の適応理由はネフローゼ症候群が22例で最多であった.ついで急速進行性糸球体腎炎(12例),無症候性の検尿異常(12例)であった.病理診断は膜性腎症が12例で最多であり,ANCA関連腎炎(8例),微小変化型ネフローゼ症候群(6例),膜性増殖性糸球体腎炎(5例),IgA腎症(4例),糖尿病性腎症(3例)であった.臨床診断と病理診断の一致率は53.8%であった.腎生検の合併症は1例(1.9%)で輸血を必要とする出血を認めた.腎生検前後のHb値は0.5±0.9 g/dL低下した.腎生検によって治療方針の変更が21名(40.4%)で行われた.考察:本研究で腎生検後に輸血以上の処置を要した割合は,過去の報告と同程度であり,後期高齢者でも安全に腎生検が施行できた.臨床診断と病理診断の一致率は約50%であり,治療方針決定に与える影響も大きいため,後期高齢者であっても,腎生検の施行を検討する必要がある.
ISSN:0300-9173
DOI:10.3143/geriatrics.58.453