高齢者急性期脳梗塞に対するrt-PA静注療法
目的:高齢化の進行に伴い脳卒中を発症する高齢者が増加,それに伴い高齢者に対してrecombinant tissue plasminogen activator(rt-PA)静注療法を行う症例も少なくない.しかしながら本邦の適応指針では高齢者(81歳以上)は慎重投与となっており,rt-PA治療後の合併症の増加が懸念されている.我々は高齢患者に対するrt-PA静注療法の臨床成績について検討した.方法:2007年4月から2017年4月の間にrt-PA治療を行った321例を対象とし,81歳以上および81歳未満の症例について,転帰(3カ月後のmodified Rankin Scale:mRS)および症候...
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Published in | 日本老年医学会雑誌 Vol. 55; no. 4; pp. 632 - 639 |
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Main Authors | , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本老年医学会
25.10.2018
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Subjects | |
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ISSN | 0300-9173 |
DOI | 10.3143/geriatrics.55.632 |
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Summary: | 目的:高齢化の進行に伴い脳卒中を発症する高齢者が増加,それに伴い高齢者に対してrecombinant tissue plasminogen activator(rt-PA)静注療法を行う症例も少なくない.しかしながら本邦の適応指針では高齢者(81歳以上)は慎重投与となっており,rt-PA治療後の合併症の増加が懸念されている.我々は高齢患者に対するrt-PA静注療法の臨床成績について検討した.方法:2007年4月から2017年4月の間にrt-PA治療を行った321例を対象とし,81歳以上および81歳未満の症例について,転帰(3カ月後のmodified Rankin Scale:mRS)および症候性頭蓋内出血(sICH)に関して比較検討した.また単変量解析で有意差のついた因子について傾向スコアマッチングを行い交絡因子を調整した上での比較も行った.結果:81歳以上(高齢群)は58例(18.1%),81歳未満(非高齢群)は263例(81.9%)であった.転帰良好(mRS 0~1)の割合は非高齢群に比べ高齢群で有意に低かった(高齢群12.1% vs. 非高齢群44.1%,P<0.001).死亡率は高齢群で有意に高かった(高齢群17.2% vs. 非高齢群4.6%,P=0.002).sICHに関しては両群間で差はなかった(高齢群3.4% vs. 非高齢群3.0%,P=1.00).マッチング後も転帰良好の割合は高齢群で有意に低かった(高齢群13.2% vs. 非高齢群36.8%,P=0.032).死亡率に関しては両群間で差はなかった(高齢群17.2% vs. 非高齢群4.6%,P=0.200).sICHは両群とも認めなかった.結論:高齢群に対するrt-PA静注療法は非高齢者と比べ頭蓋内出血に差はないが,有効性については,高齢群で有意に転帰良好の割合が低いことが示された. |
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ISSN: | 0300-9173 |
DOI: | 10.3143/geriatrics.55.632 |