口唇裂初回手術の術前スクリーニング検査に関する検討
目的:口唇裂初回手術にあたって,全身状態を評価し合併異常の有無を確認することは重要であるが,そのためにどのような検査が必要なのかということについては未だ一致した見解は得られていない。したがって,画像検査によるスクリーニングが口唇裂の合併異常検索にどの程度有効であったかを評価する目的で,東京都立小児総合医療センター (当院) で初回手術を行った患者について後方視的検討を行った。 方法:2010年4月から2014年3月までの4年間に当院で口唇裂初回手術を行った全133症例につき,合併異常の有無と発見の契機に関して調査を行った。この際,副耳や先天性耳瘻孔といった視診で容易に診断可能な体表形態異常は対...
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Published in | Journal of Japanese Cleft Palate Association Vol. 40; no. 3; pp. 207 - 212 |
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Main Authors | , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本口蓋裂学会
2015
Japanese Cleft Palate Association |
Subjects | |
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ISSN | 0386-5185 2186-5701 |
DOI | 10.11224/cleftpalate.40.207 |
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Summary: | 目的:口唇裂初回手術にあたって,全身状態を評価し合併異常の有無を確認することは重要であるが,そのためにどのような検査が必要なのかということについては未だ一致した見解は得られていない。したがって,画像検査によるスクリーニングが口唇裂の合併異常検索にどの程度有効であったかを評価する目的で,東京都立小児総合医療センター (当院) で初回手術を行った患者について後方視的検討を行った。 方法:2010年4月から2014年3月までの4年間に当院で口唇裂初回手術を行った全133症例につき,合併異常の有無と発見の契機に関して調査を行った。この際,副耳や先天性耳瘻孔といった視診で容易に診断可能な体表形態異常は対象としないこととした。 結果:多くの症例で心エコー・腹部エコー・新生児科医による診察を中心とした合併異常の検索が行われていた。133症例中,18例が体表形態異常以外の合併異常を有していた。そのうち5例は重篤な心疾患や症候群であり,スクリーニング検査以前に明らかな合併異常と考えられた。また,4例は気管狭窄や卵円孔が心房中隔欠損として残存したものなど,スクリーニング検査でも発見不可能であったと考えられた。残る9例はスクリーニング検査によって初めて診断可能であったと思われる合併異常であった。 考察:口唇裂術前の全身状態評価に関しては,施設によって初診までの期間や医療機関へのアクセスの良し悪しは異なり,また医療経済的側面や被爆のリスクなどを考えると,必要十分な術前検査の内容を画一的に決めることは難しい。しかしながら,当院におけるプロトコールのもと発見された,合併異常を有する口唇裂症例の内訳を提示することは他の施設にとっても有用となりうると考えている。今回の検討からは,当院におけるスクリーニングプロトコールはリスクベネフィットの観点から比較的妥当なものと考えられた。 |
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ISSN: | 0386-5185 2186-5701 |
DOI: | 10.11224/cleftpalate.40.207 |