選択的腹腔動脈造影による肝病変の診断

肝臓病変の診断については, 古くから各種機能検査法を始めとして多くの方法が用いられているところであるが, 最近早期診断の観点から, その微細病変の追求が問題とされ, スクリーニング的な肝機能検査法では表現不充分である病変の存在推定診断や, さらには質的診断がとり上げられる現況にある. この内でも肝の血管造影は, しばしば重要な役割を果してきたが, これらの多くは静脈側, 特に門脈側から行なわれてきた. 脾門脈造影1)の形で, 門脈圧亢進症や, 静脈血行動態の変化を明らかにする上に寄与した意義は大きい. しかしながら, 肝臓病変のうち, 肝腫瘍や肝硬変においては, 静脈よりも動脈がより多く関与し...

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Published in医療 Vol. 22; no. 11; pp. 1282 - 1290
Main Authors 村井, 知也, 根川, 泰夫, 宮代, 明, 栗村, 統, 関, 勝忠, 桐本, 孝次, 小塚, 隆弘, 野崎, 公敏
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 国立医療学会 1968
医療同好会
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Summary:肝臓病変の診断については, 古くから各種機能検査法を始めとして多くの方法が用いられているところであるが, 最近早期診断の観点から, その微細病変の追求が問題とされ, スクリーニング的な肝機能検査法では表現不充分である病変の存在推定診断や, さらには質的診断がとり上げられる現況にある. この内でも肝の血管造影は, しばしば重要な役割を果してきたが, これらの多くは静脈側, 特に門脈側から行なわれてきた. 脾門脈造影1)の形で, 門脈圧亢進症や, 静脈血行動態の変化を明らかにする上に寄与した意義は大きい. しかしながら, 肝臓病変のうち, 肝腫瘍や肝硬変においては, 静脈よりも動脈がより多く関与して能動的変化をみせることが認められ, 肝領域での血管造影は, 動脈造影の診断的意義が大きくなってきた. 加えて, Odman2)がSeldinger法を用いて, 経皮的にカテーテルを挿入する方法を考案して以来は, 連続直接撮影装置, 自動注入装置などの器械の進歩とともに, その実施手技の簡易化と相まって急速に普及発展してきた. 最近では肝シンチグラムによる診断法の向上1)3)4)とともに, 肝領域での動脈造影は大きい診断価値をもっている. 本邦でもすでに, 田坂, 5)小塚6)ら多くの発表があるが, われわれも昭和40年10月以来, 当院において肝病変, 特に肝腫瘍や肝硬変を主目的として, 選択的腹腔動脈造影を実施した28症例につき, その血管造影像を形態学的に分析検討した結果をここに報告する.
ISSN:0021-1699
1884-8729
DOI:10.11261/iryo1946.22.1282