膀胱癌における脈管侵襲の意義について
膀胱癌における脈管侵襲の意義を明らかにする目的で, 1962年~1978年に行なわれた膀胱全摘出症例175例のうち膀胱全層標本の保存されている100例を対象にして retrospective に組織学的検討を行ない以下の成績を得た. 1) 膀胱全摘出症例100例中脈管侵襲陽性例は46例 (46%) であり, 血管侵襲とリンパ管侵襲はほぼ同頻度に認められた. 2) 血管侵襲, リンパ管侵襲とも, pT 2以下の low stage 群よりもpT 3以上の high stage 群に高頻度に認められた. pT 2以下の症例では大部分が表在性の脈管に, pT 3以上では膀胱壁全体にわたつて癌細胞の脈...
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Published in | 日本泌尿器科學會雑誌 Vol. 74; no. 2; pp. 218 - 225 |
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Main Authors | , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
社団法人 日本泌尿器科学会
1983
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Online Access | Get full text |
ISSN | 0021-5287 1884-7110 |
DOI | 10.5980/jpnjurol1928.74.2_218 |
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Summary: | 膀胱癌における脈管侵襲の意義を明らかにする目的で, 1962年~1978年に行なわれた膀胱全摘出症例175例のうち膀胱全層標本の保存されている100例を対象にして retrospective に組織学的検討を行ない以下の成績を得た. 1) 膀胱全摘出症例100例中脈管侵襲陽性例は46例 (46%) であり, 血管侵襲とリンパ管侵襲はほぼ同頻度に認められた. 2) 血管侵襲, リンパ管侵襲とも, pT 2以下の low stage 群よりもpT 3以上の high stage 群に高頻度に認められた. pT 2以下の症例では大部分が表在性の脈管に, pT 3以上では膀胱壁全体にわたつて癌細胞の脈管内浸潤を認めたが, 殊に膀胱壁の深在血管およびリンパ管に侵襲をみる割合が多かつた. 3) grade 3の high grade 群では grade 1および2の low grade 群に比して, 脈管侵襲の頻度は明らかに高く, 膀胱癌においても異型度の高い癌細胞ほど脈管に対する破壊的増殖の程度が強いことが示唆された. 4) 移行上皮癌 (41.7%) よりも扁平上皮癌 (100%), 腺管 (83.3%) において脈管侵襲の頻度は高かつた. 5) リンパ管侵襲陽性例36例中17例 (47.2%) に骨盤リンパ節転移が証明された. リンパ管侵襲が筋層表層よりも浅在部にみられる場合は13例中2例 (15.4%), 筋層深層よりも深部にみられる場合は20例中15例 (75%) に骨盤リンパ節転移が認められた. 血管侵襲単独陽性例10例中2例 (20%) でもリンパ節転移を証明し得た. 6) 脈管侵襲陽性例46例中32例 (69.6%), 陰性例54例中15例 (27.8%) が死亡し, 両者の間に明らかな差が認められた. 前者の直接死因としては癌死の割合が多かつた. 7) 骨盤リンパ節転移例21例中17例 (80.9%) が死亡し, その平均転移リンパ節数は12個であつた. |
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ISSN: | 0021-5287 1884-7110 |
DOI: | 10.5980/jpnjurol1928.74.2_218 |