特定健診・特定保健指導の功罪 当院診療圏での平成20年度実績からの考察
平成20年度から始まった特定健診・特定保健指導は,長年わが国の住民健診の中心的役割を担ってきた基本健康診査からの大転換であった。 特定健診・特定保健指導は実施主体が行政から保険者になるなど多くの変更があり,これまでの基本健康診査と比較して予想以上の影響があったと考え検証した。 特定健診では健診の目的をメタボリックシンドロームの該当者・予備群の減少と明確に示し,健診項目の変更や基準範囲の変更がなされた。この影響は予想以上に大きく,1) 高齢者の受診数の減少,2) 貧血検査・心電図検査の実施が激減,3) 眼底検査実施は皆無に等しい状況,4) 基準範囲の変更により変更された項目では要医療や要経過...
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Published in | 日本農村医学会雑誌 Vol. 59; no. 4; pp. 470 - 481 |
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Main Authors | , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本農村医学会
30.11.2010
日本農村医学会 |
Subjects | |
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ISSN | 0468-2513 1349-7421 |
DOI | 10.2185/jjrm.59.470 |
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Summary: | 平成20年度から始まった特定健診・特定保健指導は,長年わが国の住民健診の中心的役割を担ってきた基本健康診査からの大転換であった。 特定健診・特定保健指導は実施主体が行政から保険者になるなど多くの変更があり,これまでの基本健康診査と比較して予想以上の影響があったと考え検証した。 特定健診では健診の目的をメタボリックシンドロームの該当者・予備群の減少と明確に示し,健診項目の変更や基準範囲の変更がなされた。この影響は予想以上に大きく,1) 高齢者の受診数の減少,2) 貧血検査・心電図検査の実施が激減,3) 眼底検査実施は皆無に等しい状況,4) 基準範囲の変更により変更された項目では要医療や要経過観察と判定される割合が大幅に増加した,などの変化がみられた。このことは従来の基本健康診査が住民の健康管理・維持のための健診であったのに対して特定健診はメタボリックシンドロームの選別手段的な位置付けとなっており,健診の意義が大きく異なったように思われる。 地域に根ざした医療・保健・福祉を目指す当院を始めとする厚生連病院としては,特定健診での多くの問題点を直視して積極的なポピュレーションアプローチを展開するなどの取り組みが重要な地域貢献となると考える。 |
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ISSN: | 0468-2513 1349-7421 |
DOI: | 10.2185/jjrm.59.470 |