熱ショック応答と内耳保護機構

熱ショック応答 (heat shock response: HSR) とはあらゆる生物がもつ根幹的なストレス応答で, 様々な障害に対し保護効果を持つ。内耳にも熱ショック転写因子 (heat shock transcription factor1: HSF1), 熱ショック蛋白質 (heat shock proteins: HSPs) が存在し, 重要な役割をもつ。音響障害でHSRは惹起されるが, HSR誘導剤をモルモットへ投与すると蝸牛熱HSF1の活性化, HSPsの誘導がおきる。反復投与でその効果は増強され, 音響障害モデルへの予防投与で, ABR閾値上昇と外有毛細胞の欠損を強力に抑制する。...

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Bibliographic Details
Published inJIBI INKOKA TEMBO Vol. 52; no. 4; pp. 198 - 204
Main Authors 山下, 裕司, 御厨, 剛史
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 耳鼻咽喉科展望会 2009
Society of Oto-rhino-laryngology Tokyo
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ISSN0386-9687
1883-6429
DOI10.11453/orltokyo.52.198

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Summary:熱ショック応答 (heat shock response: HSR) とはあらゆる生物がもつ根幹的なストレス応答で, 様々な障害に対し保護効果を持つ。内耳にも熱ショック転写因子 (heat shock transcription factor1: HSF1), 熱ショック蛋白質 (heat shock proteins: HSPs) が存在し, 重要な役割をもつ。音響障害でHSRは惹起されるが, HSR誘導剤をモルモットへ投与すると蝸牛熱HSF1の活性化, HSPsの誘導がおきる。反復投与でその効果は増強され, 音響障害モデルへの予防投与で, ABR閾値上昇と外有毛細胞の欠損を強力に抑制する。HSRの音響障害に対する保護のメカニズムには主に, (1)シャペロン機能, (2)抗アポトーシス効果, (3)抗酸化作用, (4)細胞自体の強化, (5)抗炎症作用の制御が考えられる。老人性難聴モデル加齢内耳ではHSPsが低下し, 薬剤でHSPsの発現を維持するとABR閾値上昇と有毛細胞欠損を軽減する。加齢時に音響負荷を加えると, 若年時にみられるHSRが減弱する。内耳加齢ではHSRが減弱し, 加齢, 外界からのストレスに易受傷性であると考えられる。 本稿ではHSRの音響障害と加齢性内耳障害への保護効果の機序を考察し, HSR誘導剤の臨床応用への可能性を述べたい。
ISSN:0386-9687
1883-6429
DOI:10.11453/orltokyo.52.198