門脈を貫通した千枚通しによる腹部刺創の1例
70代の女性。自殺企図で約20cmの千枚通しで自身の腹部を刺し体動困難となった。7時間後に千枚通しが刺さったまま当院に搬送となった。CTでは成傷器の周囲に少量の血腫を認めたが, 明らかなextravasationは認めなかった。成傷器が胃を貫通していることは断定できたが, 血管損傷はアーチファクトで判断が困難であった。成傷器除去と臓器損傷の確認・修復のため緊急手術となった。千枚通しは幽門輪の口側の胃を貫通し膵頭部下縁の後腹膜を通り下大静脈と腹部大動脈の間を貫き椎骨で止まっていた。胃部分切除を行い, 成傷器を抜去したが門脈を貫いていたため門脈・脾静脈・下腸間膜静脈・上腸間膜静脈をクランプし修復し...
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Published in | 日本救急医学会関東地方会雑誌 Vol. 39; no. 2; pp. 258 - 261 |
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Main Authors | , , , , , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本救急医学会関東地方会
31.12.2018
Japanese Association for Acute Medicine of Kanto |
Subjects | |
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Summary: | 70代の女性。自殺企図で約20cmの千枚通しで自身の腹部を刺し体動困難となった。7時間後に千枚通しが刺さったまま当院に搬送となった。CTでは成傷器の周囲に少量の血腫を認めたが, 明らかなextravasationは認めなかった。成傷器が胃を貫通していることは断定できたが, 血管損傷はアーチファクトで判断が困難であった。成傷器除去と臓器損傷の確認・修復のため緊急手術となった。千枚通しは幽門輪の口側の胃を貫通し膵頭部下縁の後腹膜を通り下大静脈と腹部大動脈の間を貫き椎骨で止まっていた。胃部分切除を行い, 成傷器を抜去したが門脈を貫いていたため門脈・脾静脈・下腸間膜静脈・上腸間膜静脈をクランプし修復した。合併症なく経過し, 術後20日で退院となった。刺創では成傷器は抜去しないことがスタンダードとされているが, 今回抜去されずに搬送されたため, 門脈貫通部からの出血がなく救命し得た腹部刺創の1例を経験したので文献的考察を加え報告する。 |
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ISSN: | 0287-301X 2434-2580 |
DOI: | 10.24697/jaamkanto.39.2_258 |