秋田県南部の一地域に暮らす石綿関連業務経験者の実態調査 暴露後の経過と健康不安

秋田県南部の一地域に暮らす石綿検診受診者の石綿関連業務経験後から現在までの経過を明らかにし,今後の情報提供・保健指導等の支援につなげることを目的に調査を行なった。石綿関連業務従事期間は平均11.1±2.12年,従事後平均29.8±4.64年が経過していた。石綿関連業務従事時,暴露予防のための個人対策は研究対象者10名全員が行なっておらず,職場講習による暴露予防の教育もされていなかった。石綿検診を受診した経緯は,新聞などのマスメディアを通して自ら情報を得たのがきっかけであった。石綿健康管理手帳交付のための条件は手帳を所持していない者5名が知らなかった。日常の健康不安は「いつ発症するかわからない」...

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Published in日本農村医学会雑誌 Vol. 59; no. 2; pp. 72 - 79
Main Authors 南部, 泰士, 桐原, 優子, 月澤, 恵子, 今野谷, 美名子, 木村, 啓二, 林, 雅人
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本農村医学会 30.07.2010
日本農村医学会
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Summary:秋田県南部の一地域に暮らす石綿検診受診者の石綿関連業務経験後から現在までの経過を明らかにし,今後の情報提供・保健指導等の支援につなげることを目的に調査を行なった。石綿関連業務従事期間は平均11.1±2.12年,従事後平均29.8±4.64年が経過していた。石綿関連業務従事時,暴露予防のための個人対策は研究対象者10名全員が行なっておらず,職場講習による暴露予防の教育もされていなかった。石綿検診を受診した経緯は,新聞などのマスメディアを通して自ら情報を得たのがきっかけであった。石綿健康管理手帳交付のための条件は手帳を所持していない者5名が知らなかった。日常の健康不安は「いつ発症するかわからない」「長期に管理しなければならない精神的負担が大きい」「石綿といわれても症状が無いからわからない」等であった。全国的に石綿労働災害認定数や悪性中皮腫が増加しており,受診者と長期にわたる関わりから健康不安を軽減するためには,1.救済制度などの法律に熟知し個々の受診者に適応する,2.長期にわたる関わりから受診者の健康課題を追跡し,QOLが維持できる支援を行なう,3.研究活動を続け社会的に公表し,救済に結びつくよう医療者としての責任を果たす支援が重要であることが示唆された。
ISSN:0468-2513
1349-7421
DOI:10.2185/jjrm.59.72