飼料用トウモロコシ栽培の今後の展望

我が国の飼料自給率は現在,26%と低い水準にあり,特に濃厚飼料の自給率は12%と低い。このため,近年の穀物価格の上昇は,我が国の畜産経営を大きく圧迫しており,畜産経営の安定化のためには自給飼料の増産が不可欠となっている。我が国で栽培される飼料作物のうち飼料用トウモロコシは乾物収量と栄養価がともに高く,飼料用トウモロコシを増産することで,輸入濃厚飼料への依存度を低下させることが可能となる。そこで,本稿では飼料用トウモロコシの特徴やその作付けに関する近年の動向について紹介するとともに,現在,著者らが行っている温暖地におけるトウモロコシ二期作栽培の可能性の検討状況について報告する。本稿では穀物価格の...

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Published in農業食料工学会誌 Vol. 76; no. 5; pp. 353 - 359
Main Author 菅野, 勉
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 農業食料工学会 01.09.2014
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ISSN2188-224X
2189-0765
DOI10.11357/jsamfe.76.5_353

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Summary:我が国の飼料自給率は現在,26%と低い水準にあり,特に濃厚飼料の自給率は12%と低い。このため,近年の穀物価格の上昇は,我が国の畜産経営を大きく圧迫しており,畜産経営の安定化のためには自給飼料の増産が不可欠となっている。我が国で栽培される飼料作物のうち飼料用トウモロコシは乾物収量と栄養価がともに高く,飼料用トウモロコシを増産することで,輸入濃厚飼料への依存度を低下させることが可能となる。そこで,本稿では飼料用トウモロコシの特徴やその作付けに関する近年の動向について紹介するとともに,現在,著者らが行っている温暖地におけるトウモロコシ二期作栽培の可能性の検討状況について報告する。本稿では穀物価格の高止まりが続いている近年の状況のもと,我が国の大家畜生産における飼料用トウモロコシの重要性について確認するとともに,作付け拡大に向けた生産現場の動向を紹介した。また,今後の飼料用トウモロコシの作付け拡大の一つの方策として,温暖地におけるトウモロコシ二期作の有効性について解説した。トウモロコシ二期作については,今後の温暖化を前提とし,そうした変化のもとでの適地の拡大予測についても述べたが,一方で,気候変動の影響によって極端現象が発生しやすくなるため,温暖化が進行しても冷害について引き続き注意を払うべきとの指摘もある。このため,関東地域等の温暖地における二期作の導入に当たっては今後の気候変動の動向を確認しながら導入を進めて行く必要がある。
ISSN:2188-224X
2189-0765
DOI:10.11357/jsamfe.76.5_353