脳血管障害による摂食・嚥下障害患者に対して舌接触補助床を用いた一症例

今回われわれは, 舌の可動が不良な脳血管障害患者に対し, 舌接触補助床 (palatal augmentation prosthesis: 以後PAP) を装着したところ良好な結果を得たので報告する。 症例は76歳男性。脳幹部脳梗塞発症し, 経口摂取が困難となったため胃瘻を造設し, その後体調が安定したため, 当科に摂食・嚥下機能の精査および訓練を依頼された。初診時, 意識は清明だが四肢麻痺があり, 気息性嗅声は著明で, 構音は不良であった。内視鏡検査において食塊の送り込み不全, 軽度の嚥下反射惹起遅延, 咽頭部貯留および液体摂取時に不顕性誤嚥が認められるも, 嚥下時の咽頭収縮は良好であった。...

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Published in老年歯科医学 Vol. 23; no. 4; pp. 404 - 411
Main Authors 中山, 渕利, 戸原, 玄, 寺本, 浩平, 中川, 量晴, 半田, 直美, 植田, 耕一郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本老年歯科医学会 2009
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Summary:今回われわれは, 舌の可動が不良な脳血管障害患者に対し, 舌接触補助床 (palatal augmentation prosthesis: 以後PAP) を装着したところ良好な結果を得たので報告する。 症例は76歳男性。脳幹部脳梗塞発症し, 経口摂取が困難となったため胃瘻を造設し, その後体調が安定したため, 当科に摂食・嚥下機能の精査および訓練を依頼された。初診時, 意識は清明だが四肢麻痺があり, 気息性嗅声は著明で, 構音は不良であった。内視鏡検査において食塊の送り込み不全, 軽度の嚥下反射惹起遅延, 咽頭部貯留および液体摂取時に不顕性誤嚥が認められるも, 嚥下時の咽頭収縮は良好であった。咽頭期の障害は軽度であることが確認された。上顎の部分床義歯に粘膜調整材を添加してPAPとして利用し, トロミをつけた水とゼリーによる直接訓練を開始した。その結果, PAPを用いて訓練を行うことで, 嚥下訓練開始から約3ヵ月後で胃瘻の抜去にはいたらないが, 一口大のおかずと軟飯を三食経口摂取可能となった。 PAPの効果を検証するために, 口腔通過時間, 咽頭通過時問, 舌根―咽頭後壁接触時間, 喉頭閉鎖時問, 咽頭部残留量, 食道入口部での嚥下圧について測定した。その結果, PAP装着により, 口腔通過時間の短縮舌根一咽頭後壁接触時間および喉頭閉鎖時間の延長, 食道入口部での嚥下圧変化, 嚥下時の咽頭残留の減少が認められた。
ISSN:0914-3866
1884-7323
DOI:10.11259/jsg1987.23.404