脳波からみた介護老人福祉施設入居者における仰臥位から坐位への姿勢変化がもたらす脳活動

目的:仰臥位から坐位へ姿勢を変化させた時の大脳の活動状態を脳波のパワースペクトルを用いて分析し,姿勢変化がもたらす脳活動について検証を行うことを目的とした.方法:対象者は介護老人福祉施設入居者17人(男性4人,女性13人,平均年齢85.35±8.26歳)である.本研究は大阪大学の保健学倫理委員会の承認を受けて行った.データ収集は,頭側挙上を行ったベッド上での坐位と椅子又は車椅子を利用した坐位の2種類の設定で行った.ベッド上坐位の頭部挙上角度は,坐位に近い70度とした.椅子坐位は,対象者が普段とっている姿勢(椅子利用9人,車椅子利用8人)とした.椅子では足底を床に,車椅子では足をフットレストに乗...

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Published in日本老年医学会雑誌 Vol. 48; no. 4; pp. 378 - 390
Main Authors 木村, 静, 片山, 恵, 徳重, あつ子, 阿曽, 洋子, 伊部, 亜希
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本老年医学会 2011
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ISSN0300-9173
DOI10.3143/geriatrics.48.378

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Summary:目的:仰臥位から坐位へ姿勢を変化させた時の大脳の活動状態を脳波のパワースペクトルを用いて分析し,姿勢変化がもたらす脳活動について検証を行うことを目的とした.方法:対象者は介護老人福祉施設入居者17人(男性4人,女性13人,平均年齢85.35±8.26歳)である.本研究は大阪大学の保健学倫理委員会の承認を受けて行った.データ収集は,頭側挙上を行ったベッド上での坐位と椅子又は車椅子を利用した坐位の2種類の設定で行った.ベッド上坐位の頭部挙上角度は,坐位に近い70度とした.椅子坐位は,対象者が普段とっている姿勢(椅子利用9人,車椅子利用8人)とした.椅子では足底を床に,車椅子では足をフットレストに乗せ,背もたれにもたれた姿勢とした.測定項目は,脳波(8点,Fp1:左前頭極部,Fp2:右前頭極部,F3:左前頭部,F4:右前頭部,C3:左中心部,C4:右中心部,O1:左後頭部,O2:右後頭部)である.測定時間は,仰臥位5分,坐位15分,会話5分である.会話内容は,坐位の感想や現在の気分等である.分析区間は5分毎とし,ベッド挙上時と椅子への移乗時のデータは除外して分析した.脳波はFFT後,α帯域成分(8~13 Hz)とβ帯域成分(13~30 Hz)のパワー値の平均値を区間毎に算出した.結果:ベッド上坐位では,仰臥位時と比較して姿勢変化による有意なパワー値の増加はみられなかった.椅子坐位では,全ての測定部位で有意なパワー値の増加を認めた.また,全部位で椅子坐位の方がベッド上坐位よりパワー値が有意に大きい時間帯が多かった.特に会話においては,Fp2以外は全て椅子坐位の方がベッド上坐位よりもパワー値が有意に大きかった.結論:仰臥位から坐位への姿勢変化がもたらす大脳活性は,姿勢変化後20分間に関してはベッド上坐位よりも椅子坐位の方が大きいことが示された.
ISSN:0300-9173
DOI:10.3143/geriatrics.48.378