健康行動における自律性の概念分析
保健指導対象者が健康維持や疾患予防のために行動変容し,健康を維持するためには動機づけによる関わりが効果的と言われている。この動機づけを促進する要因に基本的心理欲求の充足がある。本研究では健康行動において基本的心理欲求の鍵となる自律性の概念分析を行い,概念の構成と定義を明らかにすることを目的とした。看護学などの論文を中心に検索し,Walker&Avantの手法に基づき,検討した。健康行動における自律性の属性として,「自らの意思を自由に持つこと」,「行動変容への自信」,「自発的な行動調整」が抽出された。また,先行要件と帰結とのつながりがいかに起こるかを規定するMediatorとして,「自分...
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Published in | 日本健康医学会雑誌 Vol. 31; no. 1; pp. 71 - 77 |
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Main Authors | , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本健康医学会
28.04.2022
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Subjects | |
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Summary: | 保健指導対象者が健康維持や疾患予防のために行動変容し,健康を維持するためには動機づけによる関わりが効果的と言われている。この動機づけを促進する要因に基本的心理欲求の充足がある。本研究では健康行動において基本的心理欲求の鍵となる自律性の概念分析を行い,概念の構成と定義を明らかにすることを目的とした。看護学などの論文を中心に検索し,Walker&Avantの手法に基づき,検討した。健康行動における自律性の属性として,「自らの意思を自由に持つこと」,「行動変容への自信」,「自発的な行動調整」が抽出された。また,先行要件と帰結とのつながりがいかに起こるかを規定するMediatorとして,「自分のとる行動を選択する感覚」,「自律支援を受けたことの知覚・認識」が抽出された。先行要件と帰結の間で強さや方向性に影響を与えるModeratorとして,「患者(保健指導対象者)と医療者を含む他者との関係性やコミュニケーション方法」,「教育」,「個別性に応じた支援を受けられる環境」が抽出された。健康行動における自律性の概念として,「自由な意思のもとで,健康行動の強化や是正を遂行できる自信を持ち,自らが行動を調整し行動変化までの道筋を立てて自身で健康を管理・維持していくこと」と定義された。保健指導の場でこの概念を用いることは,保健指導対象者の自律性を高める関わり方や必要な資源を明らかにすることにもつながると示唆された。 |
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ISSN: | 1343-0025 2423-9828 |
DOI: | 10.20685/kenkouigaku.31.1_71 |