地域高齢者の咬合力と介護予防因子との関連について

目的:要介護移行リスクの一つに咀嚼能力がある.本研究では介護予防の支援を目指して,咀嚼能力の指標の一つである咬合力を用い,咬合力の特徴とその関連因子を明らかにすることを目的とした.方法:大都市近郊T市の老人福祉センターを利用している60∼87歳の高齢者372人(男性101人,女性271人)を対象にデンタルプレスケール/オクルーザーシステムを用いて咬合力を測定した.さらに関連因子を探索するために,身体測定と心理的·身体的·生活因子に関する質問紙調査を行った.結果:咬合力は男性502.4N,女性372.2Nを示し,60,70歳代では,男性の方が女性よりも有意に高値であった.咬合力は男女とも年齢とは...

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Published in日本老年医学会雑誌 Vol. 46; no. 1; pp. 55 - 62
Main Author 河野, 令
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本老年医学会 01.01.2009
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ISSN0300-9173
DOI10.3143/geriatrics.46.55

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Summary:目的:要介護移行リスクの一つに咀嚼能力がある.本研究では介護予防の支援を目指して,咀嚼能力の指標の一つである咬合力を用い,咬合力の特徴とその関連因子を明らかにすることを目的とした.方法:大都市近郊T市の老人福祉センターを利用している60∼87歳の高齢者372人(男性101人,女性271人)を対象にデンタルプレスケール/オクルーザーシステムを用いて咬合力を測定した.さらに関連因子を探索するために,身体測定と心理的·身体的·生活因子に関する質問紙調査を行った.結果:咬合力は男性502.4N,女性372.2Nを示し,60,70歳代では,男性の方が女性よりも有意に高値であった.咬合力は男女とも年齢とは負の相関関係(r=-0.2 p<0.01),残存歯数とは正の相関関係(r=0.6 p<0.01)を示した.年齢と残存歯数を共変量とした偏相関では,男性は握力と正の相関関係,女性は通常歩行速度と全身筋肉量に正の相関関係,Timed Up & Goと負の相関関係にあった.質問紙において,咬合力は,男女とも共通して,硬い食品がかめる群はかめない群と比べて有意に高値を示した.さらに男性では定期的な散歩をする,たばこを吸わない,お酒をほぼ毎日飲む等の生活因子が,女性では口腔内満足度が満足,うつ傾向の疑いが等の心理的因子と1 km継続歩行を不自由なく歩ける,一人で遠出できる等の移動に関係する身体的因子が有意に高値を示した.結論:咀嚼能力の指標の一つである咬合力は体力,移動能力,生活習慣と関係した.
ISSN:0300-9173
DOI:10.3143/geriatrics.46.55