在宅療養要介護高齢者の死亡場所ならびに死因についての検討

目的:高齢社会の進行に伴い,高齢者の死亡者数の増加が想定されており,それに伴って死亡(看取り)場所についての議論もなされている.自宅死を規定する因子についての検討は,これまでいくつか報告されているが,いまだ明確な結論は出ていない.今回在宅要介護高齢者の死亡場所,死因について調査を行い,特に自宅死にかかわる因子について検討を行った.方法:自宅療養中の要介護高齢者を対象とした前向きコホート研究(NLS-FE)の参加者1,875名(65歳以上,平均年齢80.6歳,男性632名,女性1,243名)とその主介護者を3年間追跡し,死亡場所,死因について検討した.結果:3年間の観察期間中454名が死亡した(...

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Published in日本老年医学会雑誌 Vol. 50; no. 6; pp. 797 - 803
Main Authors 井澤, 幸子, 榎, 裕美, 廣瀬, 貴久, 葛谷, 雅文, 長谷川, 潤
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本老年医学会 2013
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ISSN0300-9173
DOI10.3143/geriatrics.50.797

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Summary:目的:高齢社会の進行に伴い,高齢者の死亡者数の増加が想定されており,それに伴って死亡(看取り)場所についての議論もなされている.自宅死を規定する因子についての検討は,これまでいくつか報告されているが,いまだ明確な結論は出ていない.今回在宅要介護高齢者の死亡場所,死因について調査を行い,特に自宅死にかかわる因子について検討を行った.方法:自宅療養中の要介護高齢者を対象とした前向きコホート研究(NLS-FE)の参加者1,875名(65歳以上,平均年齢80.6歳,男性632名,女性1,243名)とその主介護者を3年間追跡し,死亡場所,死因について検討した.結果:3年間の観察期間中454名が死亡した(病院死347名,自宅死107名).全体での死因は肺炎(22.7%),悪性腫瘍(14.5%),心不全(13.2%)の順で多く,自宅死では老衰(22.4%),心不全(18.7%)が多かった.病院死と比較すると,自宅死では女性の割合が多く,より高齢で,認知症が多く,悪性腫瘍が少なかった.また,主介護者因子としては,配偶者以外の主介護者が多かったが,主介護者の介護負担感,介護保険によるサービス(訪問看護,訪問介護,デイサービス)の利用率は両者で差を認めなかった.多重Cox比例ハザード分析により,自宅死に有意な関連を認めたものは,要介護者の年齢(より高齢)のみで糖尿病と悪性腫瘍の存在は負の関係を認めた.結論:今回の研究では,死亡場所を規定する因子としては,要介護者の年齢と,併存症として糖尿病ならびに悪性腫瘍の存在,また死因として肺炎や悪性腫瘍,老衰が抽出された.今回の調査では把握できなかった重要な因子が複数存在しており,今後更なる検討が必要である.
ISSN:0300-9173
DOI:10.3143/geriatrics.50.797