逆たこつぼ型心筋症類似の病態を呈し特異な冠動脈造影所見を認めた多発内分泌腫瘍症候群の1例

症例は36歳,女性.母親が30歳代に急死 (原因不明).めまいと嘔気を主訴に当院を受診し,メトクロプラミド投与後に突然の頻脈やチアノーゼが出現した.胸部X線では著明な肺水腫を認め直ちに人工呼吸管理を開始した.心電図では洞性頻脈に加え広範なST変化が認められた.冠動脈造影は心筋の一部に造影剤の浸み出しを認める特異な造影所見を呈し,左室造影では心尖部の過収縮と中部から基部にかけての無収縮が認められ,いわゆる逆たこつぼ型左室壁運動障害の所見であった.CTでは両側副腎腫瘍と甲状腺腫瘍が確認され,家族歴からも多発内分泌腫瘍症候群に合併した副腎クリーゼが疑われた.血中カテコラミン類の濃度は著明に上昇してい...

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Published inShinzo Vol. 42; no. 3; pp. 338 - 343
Main Authors 若菜, 紀之, 福山, 恵, 加藤, 拓, 立川, 弘孝, 上林, 大輔, 全, 完, 矢野, 豊, 槙, 系, 深井, 邦剛
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 2010
Japan Heart Foundation
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo.42.338

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Summary:症例は36歳,女性.母親が30歳代に急死 (原因不明).めまいと嘔気を主訴に当院を受診し,メトクロプラミド投与後に突然の頻脈やチアノーゼが出現した.胸部X線では著明な肺水腫を認め直ちに人工呼吸管理を開始した.心電図では洞性頻脈に加え広範なST変化が認められた.冠動脈造影は心筋の一部に造影剤の浸み出しを認める特異な造影所見を呈し,左室造影では心尖部の過収縮と中部から基部にかけての無収縮が認められ,いわゆる逆たこつぼ型左室壁運動障害の所見であった.CTでは両側副腎腫瘍と甲状腺腫瘍が確認され,家族歴からも多発内分泌腫瘍症候群に合併した副腎クリーゼが疑われた.血中カテコラミン類の濃度は著明に上昇していた.急性期は経皮的心肺補助循環装置などを用いた集学的治療を要したがその後劇的な改善を示し,後日両側副腎摘出術および甲状腺摘出術を施行し社会復帰となった.その後,遺伝子解析により多発内分泌腫瘍症候群2A型と診断された.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo.42.338