術後に唾液腺導管嚢胞と診断された耳下腺嚢胞の1例

今回われわれは術後に唾液腺導管嚢胞と診断された耳下腺嚢胞の1例を経験した。 27歳男性, 1週間前から左耳下部の腫脹,圧痛を認め受診した。 左耳下部に可動性良好な腫瘤を認め, 超音波検査, 頸部 MRI において耳下腺前方で咬筋外側の皮下に嚢胞性病変を認めた。 細胞診を施行したところ Class II であり明らかな悪性所見を認めなかった。 診断及び根治目的で手術を行う方針となった。 左耳前部に S 字状の切開をおいた。 耳下腺前方で咬筋外側の皮下に嚢胞性病変を認めた。 嚢胞壁と皮下軟部組織が強く癒着しており, 同部位における剥離操作において嚢胞壁の損傷をきたしたため可及的に摘出した。 病理学...

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Published in耳鼻咽喉科展望 Vol. 60; no. 6; pp. 276 - 280
Main Authors 内尾, 紀彦, 黒田, 健斗, 倉島, 彩子, 重田, 泰史
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 耳鼻咽喉科展望会 15.12.2017
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Summary:今回われわれは術後に唾液腺導管嚢胞と診断された耳下腺嚢胞の1例を経験した。 27歳男性, 1週間前から左耳下部の腫脹,圧痛を認め受診した。 左耳下部に可動性良好な腫瘤を認め, 超音波検査, 頸部 MRI において耳下腺前方で咬筋外側の皮下に嚢胞性病変を認めた。 細胞診を施行したところ Class II であり明らかな悪性所見を認めなかった。 診断及び根治目的で手術を行う方針となった。 左耳前部に S 字状の切開をおいた。 耳下腺前方で咬筋外側の皮下に嚢胞性病変を認めた。 嚢胞壁と皮下軟部組織が強く癒着しており, 同部位における剥離操作において嚢胞壁の損傷をきたしたため可及的に摘出した。 病理学的検索の結果, 唾液腺導管嚢胞の診断となった。 術後2日目より常食を開始したところ, ドレーンからの透明な排液の増加を認め, 唾液漏が疑われた。 創部をガーゼで圧迫し, 絶食にて経過観察を行ったところ症状は軽快し, 2ヵ月後に完治した。 耳下腺嚢胞性疾患の術前鑑別診断は困難であり, 手術の際には唾液漏及び顔面神経麻痺を起こさぬよう留意すべきである。 また嚢胞壁と皮下軟部組織との癒着が強い場合は, 繊細な剥離操作を検討すべきである。
ISSN:0386-9687
1883-6429
DOI:10.11453/orltokyo.60.6_276