地域在住の55歳以上の住民におけるオーラルディアドコキネシスの基準値の検討

目的:自立高齢者の構音機能に関する評価基準値を求めるために,55歳以上の地域住民212名を対象に,オーラルディアドコキネシス(OD)を調べ,その値について年代と性別毎に比較した.方法:ODは単音節の「ぱ」(/pa/)「た」(/ta/)「か」(/ka/)を測定した.年齢群を3群(55~64歳・65~74歳・75歳以上)に分け,年齢群別のOD値の平均値を算出するとともに,性別毎に年齢群別の各ODの平均値の比較を行った.さらに,年齢群および性別毎に「平均値-2標準偏差値(SD)」を求め,各群での下限基準値を提示した.結果:男女を併せた全体では,全てのODにおいて75歳以上群の値は,55~64歳群と比...

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Published in日本老年医学会雑誌 Vol. 50; no. 2; pp. 258 - 263
Main Authors 原, 修一, 三浦, 宏子, 山崎, きよ子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本老年医学会 2013
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Summary:目的:自立高齢者の構音機能に関する評価基準値を求めるために,55歳以上の地域住民212名を対象に,オーラルディアドコキネシス(OD)を調べ,その値について年代と性別毎に比較した.方法:ODは単音節の「ぱ」(/pa/)「た」(/ta/)「か」(/ka/)を測定した.年齢群を3群(55~64歳・65~74歳・75歳以上)に分け,年齢群別のOD値の平均値を算出するとともに,性別毎に年齢群別の各ODの平均値の比較を行った.さらに,年齢群および性別毎に「平均値-2標準偏差値(SD)」を求め,各群での下限基準値を提示した.結果:男女を併せた全体では,全てのODにおいて75歳以上群の値は,55~64歳群と比較して有意に低値であった.また,/pa/のODは75歳以上群では65~74歳群より有意に低値であり,/ta/のODは65~74歳群では55~64歳群より有意に低値であった.データの分布より,各年代群での各々のODについて下限基準値を求めたところ,55~64歳群では4.9回(/pa/),4.7回(/ta/),4.5回(/ka/)であったが,65~74歳群では3.8回(/pa/),4.1回(/ta/),3.7回(/ka/)であった.また75歳以上群では,3.8回(/pa/),3.3回(/ta/),2.6回(/ka/)であった.一方,女性においては,75歳以上群の各OD(/pa/,/ta/,/ka/)は,55~64歳群ならびに65~74歳群の値と比較して有意に低値を示したが,男性では,いずれのODにおいても年代群間での有意差は認められなかった.結論:健康な中高年の地域住民の構音機能評価指標として,オーラルディアドコキネシスの年代・性別毎の下限基準値を示すことができた.また,/ta/は高齢前期より顕著に低下傾向を示すこと,女性は加齢による音声・構音機能の低下が明確になりやすいことが示唆された.
ISSN:0300-9173
DOI:10.3143/geriatrics.50.258