環境真正担子菌スエヒロタケ (Schizophyllum commune) によるアレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎の検討

背景・目的: 真菌に対する I・III アレルギー性炎症を病態とするアレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎は, 難治性副鼻腔炎の1つとして注目されている。スエヒロタケは真正担子菌の1つでいわゆるキノコに属する真菌である。病原真菌として日本からの報告が世界の46% を占め, その内アレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎やアレルギー性気管支肺真菌症の報告が多く近年注目されている。しかしこれまではスエヒロタケに対する I 型アレルギーの証明が不可能であったため, 確定診断に至っていないことが多い。今回我々は PCR 解析によるスエヒロタケの検出と同抗原に対する I 型アレルギーを証明し, アレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎の...

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Published in耳鼻咽喉科展望 Vol. 56; no. 6; pp. 352 - 362
Main Authors 松脇, 由典, 小川, 晴彦, 岩﨑, 聖子, 宇野, 匡祐, 若林, 真理子, 坂本, 和美, 大櫛, 哲史, 鴻, 信義, 森山, 寛, 小島, 博己
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 耳鼻咽喉科展望会 2013
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Summary:背景・目的: 真菌に対する I・III アレルギー性炎症を病態とするアレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎は, 難治性副鼻腔炎の1つとして注目されている。スエヒロタケは真正担子菌の1つでいわゆるキノコに属する真菌である。病原真菌として日本からの報告が世界の46% を占め, その内アレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎やアレルギー性気管支肺真菌症の報告が多く近年注目されている。しかしこれまではスエヒロタケに対する I 型アレルギーの証明が不可能であったため, 確定診断に至っていないことが多い。今回我々は PCR 解析によるスエヒロタケの検出と同抗原に対する I 型アレルギーを証明し, アレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎の診断が可能であるかを検討した。  方 法: 慢性副鼻腔炎の診断のもと, 内視鏡下鼻内手術を施行し真菌検査を行った458例中, 通常の真菌培養検査では判定困難な真菌10検体に対して PCR 解析による真菌同定を試みた。スエヒロタケが検出された5症例に対し, スエヒロタケに対する I 型アレルギー (皮内テスト, 血清中特異的 IgE 値〔RAST〕) の有無を検査し, アレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎であるか, あるいは真菌塊であるかを診断した。  結 果: 真菌培養検査からは458検体中, 26検体に真菌が検出されアスペルギルス属10検体, ペニシリウム属6検体, 不明真菌10検体であった。形態解析からは同定困難であった不明真菌に対して PCR 解析による同定を試みた結果, 5検体においてスエヒロタケが同定された。スエヒロタケが検出された5症例は, CT などの画像所見, 手術所見, 病理所見からは3例がアレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎, 2例は真菌塊が疑われた。前者の3例はスエヒロタケに対する皮内テスト/RAST とも陽性であり, スエヒロタケによるアレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎と診断した。後者2例中1例はスエヒロタケに対する皮内テスト/RAST ともに陰性であり, 臨床所見と合致した結果であった。アレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎3例のうち, 2例に術後再発を認め, 1例では3度の再発を認め, コントロールの難しい症例であった。  考 察: 形態的に同定不可能な真菌に対し PCR 解析を行うことにより菌種同定が可能であった。本邦において培養不明真菌の中にスエヒロタケが多く含まれている可能性が示唆された。スエヒロタケ抗原による皮内テストと血清中真菌特異的 IgE によりアレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎の診断を確定し, 疾患特異的な治療が可能となった。
ISSN:0386-9687
1883-6429
DOI:10.11453/orltokyo.56.352