末期がん患者の在宅診療の取り組み―退院支援の標準化に関する研究

目的:これまで末期癌患者のケアは病院で行われてきたが,近年これにかわるものとして在宅診療に焦点が当てられている.今回我々は,病院から在宅診療へのスムーズな移行に影響を与える重要な因子は何かを検討した.方法:在宅医療専門診療所「ゆうの森たんぽぽクリニック」のスタッフが訪問診療に携わった連続66例の末期癌患者データを検討した.検討項目は以下の通りである.1)全身状態,2)家族での介護者の内訳,3)介護保険申請率,4)退院カンファレンスを行った症例の割合,5)死亡時間,6)訪問診療開始後1週間および最後の一週間あたりの訪問診療回数.結果:66症例の平均年齢は71.1±2.0歳(男性58%)であった....

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Published in日本老年医学会雑誌 Vol. 44; no. 6; pp. 734 - 739
Main Authors 越智, 雅之, 永井, 康徳, 伊賀瀬, 道也, 中村, 俊平, 三木, 哲郎, 小原, 克彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本老年医学会 2007
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ISSN0300-9173
DOI10.3143/geriatrics.44.734

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Summary:目的:これまで末期癌患者のケアは病院で行われてきたが,近年これにかわるものとして在宅診療に焦点が当てられている.今回我々は,病院から在宅診療へのスムーズな移行に影響を与える重要な因子は何かを検討した.方法:在宅医療専門診療所「ゆうの森たんぽぽクリニック」のスタッフが訪問診療に携わった連続66例の末期癌患者データを検討した.検討項目は以下の通りである.1)全身状態,2)家族での介護者の内訳,3)介護保険申請率,4)退院カンファレンスを行った症例の割合,5)死亡時間,6)訪問診療開始後1週間および最後の一週間あたりの訪問診療回数.結果:66症例の平均年齢は71.1±2.0歳(男性58%)であった.1)初診時認知症が30%,中心静脈栄養管理症例が23%,持続的酸素吸入は45%であった.排泄も70%で何らかの介助を必要とした.2)主介護者は7割が女性であり介護に携われる人数は一家庭あたり平均2.0人であった.3)50%もの症例で介護保険を申請されていなかった.4)紹介元病院とクリニックとの間の退院前カンファレンスは21%でしか行われていなかった.5)自宅で死亡した43例の死亡時刻は通常勤務帯(8:00∼18:00)以外が70%を占めていた.6)平均在宅医療機関は62.5日であったが在宅医療開始後2週間で10%を越える患者が離脱(死亡あるいは病状悪化による再入院)していた.離脱前1週間の訪問診察回数は,在宅医療開始1週間と比べて有意に増加していた.(5.0±0.2 VS. 3.9±0.2,P<0.01)訪問看護の頻度も同様に増加しており(3.2±0.2 VS. 2.4±0.2,P<0.01)両者をあわせると離脱前一週間は1日一回以上の訪問診療が必要であった.結論:1.末期癌患者の在宅医療を入院でのケアと同様に行うためには,24時間対応の在宅医療専門診療所が必要である.2.家庭で家族とゆとりある時間を持つためには早期の在宅診療への移行が必要である.このためには在宅医療への調整を目的とした在宅医療専門診療所と紹介元病院との間の退院前カンファレンスが最も重要である.これに加えて患者および家族が入院中に介護保険を申請する必要があり医療スタッフが情報提供および援助をすべきである.
ISSN:0300-9173
DOI:10.3143/geriatrics.44.734