下部食道癌化学放射線治療後の再発性放射線性心膜炎に低用量ステロイドが奏功した1例

症例は80歳,男性.2006年5月ころより嚥下時の違和感を自覚.上部消化管内視鏡検査の結果,下部食道癌を認めたため,治療法として化学放射線治療を選択した.2006年10月までに合計50Gyの放射線照射を終了し,再発なく完全寛解を維持していたが,2008年3月ころより息切れが生じ,同年11月には心膜液と胸水貯留の増悪を認めたため精査加療目的にて入院加療となった.経胸壁心エコー図検査では大量の心膜液貯留と右室壁の肥厚を認めたが,右心系の圧排所見はなく,心タンポナーデにはいたっていなかった.心膜ドレナージを施行したところ,悪性疾患,感染症,自己免疫疾患,甲状腺疾患などは否定的であり,病歴より放射線性...

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Published inShinzo Vol. 42; no. 3; pp. 369 - 374
Main Authors 松室, 明義, 松原, 弘明, 中村, 猛, 白石, 裕一, 西澤, 信也, 沢田, 尚久
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 2010
Japan Heart Foundation
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo.42.369

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Summary:症例は80歳,男性.2006年5月ころより嚥下時の違和感を自覚.上部消化管内視鏡検査の結果,下部食道癌を認めたため,治療法として化学放射線治療を選択した.2006年10月までに合計50Gyの放射線照射を終了し,再発なく完全寛解を維持していたが,2008年3月ころより息切れが生じ,同年11月には心膜液と胸水貯留の増悪を認めたため精査加療目的にて入院加療となった.経胸壁心エコー図検査では大量の心膜液貯留と右室壁の肥厚を認めたが,右心系の圧排所見はなく,心タンポナーデにはいたっていなかった.心膜ドレナージを施行したところ,悪性疾患,感染症,自己免疫疾患,甲状腺疾患などは否定的であり,病歴より放射線性心膜炎と診断した.胸水貯留も放射線縦隔障害によるものと考えた.ドレナージ後も短期間に心膜液,胸水貯留を繰り返したが,低用量のステロイド30mg (0.54mg/kg/日) を経口投与したところ,コントロールが可能となった.現在,外来にてステロイド漸減中 (20mg) であるが,内服開始後3カ月間,心膜液,胸水ともに増悪は認められない.再発を繰り返す放射線性心膜炎および胸水貯留に対して低用量ステロイド治療の有効性が示唆される.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo.42.369