同種末梢血幹細胞移植

わが国では現在, 年間830~40例くらいの造血幹細胞移植が行われるようになっており, そのうち約3分の1を自己末梢血幹細胞移植(autologous peripheral blood stem cell transplantation:auto-PBSCT)が占めている. auto-PBSCTと自家骨髄移植(autologous bone marrow transplantation:auto-BMT)を較べてみると, その治療理念は全く同じであるが, 造血幹細胞採取に全身麻酔を必要としない, あるいは移植後の造血回復がきわめて速やかである, という二つのauto-PBSCTの有利な点が指摘...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 44; no. 3; pp. 425 - 429
Main Authors 原田, 実根, 大本, 英次郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会 1998
日本輸血学会
Online AccessGet full text
ISSN0546-1448
1883-8383
DOI10.3925/jjtc1958.44.425

Cover

More Information
Summary:わが国では現在, 年間830~40例くらいの造血幹細胞移植が行われるようになっており, そのうち約3分の1を自己末梢血幹細胞移植(autologous peripheral blood stem cell transplantation:auto-PBSCT)が占めている. auto-PBSCTと自家骨髄移植(autologous bone marrow transplantation:auto-BMT)を較べてみると, その治療理念は全く同じであるが, 造血幹細胞採取に全身麻酔を必要としない, あるいは移植後の造血回復がきわめて速やかである, という二つのauto-PBSCTの有利な点が指摘できる1). これらの点を考慮するとallo-PBSCTが同種骨髄移植(allogeneic bone marrow transplantation:allo-BMT)の代替法となりうることは容易に想像され, 積極的に試みられるようになった. allo-PBSCTの最初の試みは, 1988年Nebraska大学のKessingerらによって報告された2). 定常状態のHLA適合同胞より10回のアフェレーシスで得られたPBSCからT細胞を除去して18歳のALLの患者に移植され早期の造血回復が確認されたが, 頻回のアフェレーシスは現実的ではなかった. その後顆粒球コロニー刺激因子(granulocytecolony-stimulating factor:G-CSF)を投与することにより幹細胞採取が行われるようになり, 1993年以降, 欧米から臨床応用が相次いで報告され3), allo-PBSCTが注目されるようになり, 文献などから判断すると, 現在までに全世界で少なくとも500例以上のallo-PBSCTが施行されていると予想される. 本稿では, 我々の経験も含めてallo-PBSCTの特徴, 現況, 今後の課題などについて概説する.
ISSN:0546-1448
1883-8383
DOI:10.3925/jjtc1958.44.425