エボラ流行における臨床試験の倫理

致死率が高いエボラウイルス病の候補治療薬について、医療体制が未整備の流行地において臨床試験を実施するには、特別な倫理的配慮が求められるが、それを考察することが、本稿の課題である。その前に、1.承認前の薬の治療目的での使用が許容される条件と、2014-15年の流行における特例使用の事例を瞥見する。ついで、2.試験薬とプラセボの二群による無作為化比較試験の可否をめぐる二つの見解を取り上げ、3.これを社会的利益に寄与する科学的方法として推奨する見解について、またその根拠とされる希少な試験薬の有効利用および試験外データのバイアスについて、そして4.エボラウイルス病でのプラセボ使用と無作為化は、それを支...

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Published in生命倫理 Vol. 26; no. 1; pp. 100 - 106
Main Authors 樽井, 正義, 前平, 由紀
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本生命倫理学会 2016
Japan Association for Bioethics
Subjects
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ISSN1343-4063
2189-695X
DOI10.20593/jabedit.26.1_100

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Summary:致死率が高いエボラウイルス病の候補治療薬について、医療体制が未整備の流行地において臨床試験を実施するには、特別な倫理的配慮が求められるが、それを考察することが、本稿の課題である。その前に、1.承認前の薬の治療目的での使用が許容される条件と、2014-15年の流行における特例使用の事例を瞥見する。ついで、2.試験薬とプラセボの二群による無作為化比較試験の可否をめぐる二つの見解を取り上げ、3.これを社会的利益に寄与する科学的方法として推奨する見解について、またその根拠とされる希少な試験薬の有効利用および試験外データのバイアスについて、そして4.エボラウイルス病でのプラセボ使用と無作為化は、それを支える倫理的原則である臨床的平衡が成り立たないゆえに、また人びとの医療への不信感のために実施可能ではないとする論拠を検討する。以上を踏まえて、5.実施された一つの臨床試験を例に、エボラ流行における臨床試験の倫理について考察する。
ISSN:1343-4063
2189-695X
DOI:10.20593/jabedit.26.1_100