リンパ節転移陽性例の検討に基づく大腸sm癌の治療方針

最近5年間に昭和大学藤が丘病院で経験した大腸早期癌は422病変であった.このうちsm癌は114病変であり, その病態の検討を行った.さらにリンパ節転移の有無の検索が行われていた80病変を対象として転移危険因子の検討を行い, sm癌の治療方針を考察した.対象症例全体のリンパ節転移率は10.0%であった.リンパ節転移陽性群で深達度sm-massive例とリンパ管侵襲陽性例が有意差をもって多かった.組織型が中分化型腺癌の場合や高分化型腺癌でも先進部に異型度低下のある場合にリンパ節転移は高頻度にみられる傾向があった.深達度sm-massive, リンパ管侵襲陽性, 癌の全体または先進部の組織型が中・低...

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Published in昭和医学会雑誌 Vol. 61; no. 1; pp. 42 - 49
Main Authors 大川, 信彦, 遠藤, 豊, 藤田, 力也
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 昭和大学学士会 28.02.2001
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Summary:最近5年間に昭和大学藤が丘病院で経験した大腸早期癌は422病変であった.このうちsm癌は114病変であり, その病態の検討を行った.さらにリンパ節転移の有無の検索が行われていた80病変を対象として転移危険因子の検討を行い, sm癌の治療方針を考察した.対象症例全体のリンパ節転移率は10.0%であった.リンパ節転移陽性群で深達度sm-massive例とリンパ管侵襲陽性例が有意差をもって多かった.組織型が中分化型腺癌の場合や高分化型腺癌でも先進部に異型度低下のある場合にリンパ節転移は高頻度にみられる傾向があった.深達度sm-massive, リンパ管侵襲陽性, 癌の全体または先進部の組織型が中・低分化型腺癌の3因子をリンパ節転移の危険因子とすると, 3つ全て陰性ならリンパ節転移はなく, 内視鏡治療後の追加腸切除やリンパ節郭清は不要と考えられた.2因子以上陽性の場合にはリンパ節転移率は18.9%と高く, 追加手術の絶対適応と考えられた.深達度sm-massiveで他の2因子陰性の場合には, リンパ節転移が1例のみ認められたが (転移率5.9%) , sm層垂直方向への浸潤距離は3, 000μmと深かった.垂直浸潤距離が1, 750μm未満の場合リンパ節転移陽性例はなく, 他の危険因子がなければ少なくとも1, 000μmまでの病変は内視鏡治療後に追加腸切除をせずに経過観察可能と考えられた.
ISSN:0037-4342
2185-0976
DOI:10.14930/jsma1939.61.42