V.直腸癌に対する腹腔鏡下手術

直腸癌に対する腹腔鏡下手術は,腫瘍が狭く深い骨盤内に存在し,鉗子操作や直腸の切離が困難であること,また周囲に排尿性機能を司る自律神経系が存在し,根治性と機能温存を両立させる必要があり,手術難度は高いとされる.そのため,結腸癌に比較してその普及は遅れてきたが,近年手術手技の向上ならびに光学系・手術機器の進歩により徐々に直腸癌に対する普及も進んできた.エビデンスの面からも主に海外のものではあるが,長期予後も含めた大規模臨床試験の結果も得られるようになり,ガイドラインにおける推奨度も高くなってきた.最近では側方郭清や内括約筋切除術など,より困難な領域にも適応が拡大されてきている.今後,長いlearn...

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Published in日本大腸肛門病学会雑誌 Vol. 66; no. 10; pp. 971 - 981
Main Authors 長谷川, 傑, 坂井, 義治, 肥田, 侯矢, 河田, 健二
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本大腸肛門病学会 2013
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ISSN0047-1801
1882-9619
DOI10.3862/jcoloproctology.66.971

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Summary:直腸癌に対する腹腔鏡下手術は,腫瘍が狭く深い骨盤内に存在し,鉗子操作や直腸の切離が困難であること,また周囲に排尿性機能を司る自律神経系が存在し,根治性と機能温存を両立させる必要があり,手術難度は高いとされる.そのため,結腸癌に比較してその普及は遅れてきたが,近年手術手技の向上ならびに光学系・手術機器の進歩により徐々に直腸癌に対する普及も進んできた.エビデンスの面からも主に海外のものではあるが,長期予後も含めた大規模臨床試験の結果も得られるようになり,ガイドラインにおける推奨度も高くなってきた.最近では側方郭清や内括約筋切除術など,より困難な領域にも適応が拡大されてきている.今後,長いlearning curveを短縮するためには更なる手術技術の進歩や手術機器の開発が望まれる.ロボット手術は腹腔鏡手術の弱点を補うものとしての役割が期待されるが,その高いコストが最大の問題点である.高難度で手術の稚拙が患者の予後に直接かかわってくる術式であることを忘れずに,きちんとした指導者のもとでトレーニングを積むことが望ましい.
ISSN:0047-1801
1882-9619
DOI:10.3862/jcoloproctology.66.971