1950年代の京都西陣地域における医療供給と受療の乖離——住民と医療者による医療扶助獲得運動を中心に

医療供給と受療の関係に注目した先行研究では、主たる関心が、国が主張する医療制度にあったが、近年では農村部を中心に地域での具体的な医療実践も注目されるようになってきた。しかし、医師数など医療供給は充足しているにもかかわらず、受療との乖離があった都市を対象とする研究はほとんどない。本論では、1950年代の京都西陣地域に注目し、医療供給と受療の乖離がどのように埋められ高度な医療体制が形成されたのかを、医療保険や病院史に注目し一次資料を用いて検討した。その結果、同地域では保険未加入者が多かったため、医療者が住民と共に医療扶助の獲得運動を行い、受療を支援したことが明らかになった。また住民が自らの出資で医...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in保健医療社会学論集 Vol. 27; no. 2; pp. 67 - 76
Main Author 西沢, いづみ
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本保健医療社会学会 31.01.2017
Subjects
Online AccessGet full text

Cover

Loading…
More Information
Summary:医療供給と受療の関係に注目した先行研究では、主たる関心が、国が主張する医療制度にあったが、近年では農村部を中心に地域での具体的な医療実践も注目されるようになってきた。しかし、医師数など医療供給は充足しているにもかかわらず、受療との乖離があった都市を対象とする研究はほとんどない。本論では、1950年代の京都西陣地域に注目し、医療供給と受療の乖離がどのように埋められ高度な医療体制が形成されたのかを、医療保険や病院史に注目し一次資料を用いて検討した。その結果、同地域では保険未加入者が多かったため、医療者が住民と共に医療扶助の獲得運動を行い、受療を支援したことが明らかになった。また住民が自らの出資で医療機関を設立し、その運営に参加できる仕組みを作り、往診や設備の充実した医療が供給できる独自の体制を構築していった。同地域における医療供給と受療の乖離を埋めるには、地域的な取り組みと、医療扶助を含めた医療供給体制が重要であるといえる。
ISSN:1343-0203
2189-8642
DOI:10.18918/jshms.27.2_67