硬膜下腔とクモ膜下腔およびクモ膜の形態学的研究

In situの固定法により採取された髄膜を電顕で観察すると, 硬膜とクモ膜とは密着しており硬膜下腔に相当するスペースは存在しないという報告5, 8, 10, 13, 14)がある. 開頭手術に際し硬膜下腔を直視下に確認し, 硬膜下血(水)腫の症例を頻繁に経験する我々脳外科医にはまったく意外である. しかし, 手術は人為的な, 血(水)腫は病的な状態であることを考慮すると, 生体内ではいったい硬膜下腔はどうなっているのかという疑問が残る. 一方, クモ膜下腔は脳脊髄液を貯え, クモ膜下出血や髄膜炎, 腫瘍の播種などが生じうる真のスペースであることには異論がない. 硬膜下腔とクモ膜下腔は脳外科領...

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Published inNeurologia medico-chirurgica Vol. 24; no. 10; pp. 737 - 746
Main Authors 山嶋哲盛, Reinhard L Friede
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本脳神経外科学会 01.01.1984
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Summary:In situの固定法により採取された髄膜を電顕で観察すると, 硬膜とクモ膜とは密着しており硬膜下腔に相当するスペースは存在しないという報告5, 8, 10, 13, 14)がある. 開頭手術に際し硬膜下腔を直視下に確認し, 硬膜下血(水)腫の症例を頻繁に経験する我々脳外科医にはまったく意外である. しかし, 手術は人為的な, 血(水)腫は病的な状態であることを考慮すると, 生体内ではいったい硬膜下腔はどうなっているのかという疑問が残る. 一方, クモ膜下腔は脳脊髄液を貯え, クモ膜下出血や髄膜炎, 腫瘍の播種などが生じうる真のスペースであることには異論がない. 硬膜下腔とクモ膜下腔は脳外科領域ではきわめて重要なスペースである. しかし, ヒトを対象として両者の関係や介在するクモ膜の役割について調べた研究はきわめて少ない3, 10, 13). 我々は, 本論文においてSchachenmayrら13)のIn situの固定法により採取したヒト剖検例の髄膜を用いて, 硬膜下腔とクモ膜下腔, および両者を隔てるクモ膜などについて形態学的な検索を行ったので報告する.
ISSN:0470-8105
DOI:10.2176/nmc.24.737