閉塞性動脈硬化症における血液凝固系の検討

下肢閉塞性動脈硬化症(ASO)は動脈硬化疾患の増加に伴い疾患数も増えてきたが,急性増悪を予知する血液凝固学的な指標はこれまでになかった.当院にて1993年 6 月から2006年12月の間に観血的治療,または血管内治療を行ったASO患者147例に対し治療前状態の評価を行い,ASOに対する日常診療で有用な増悪予知の指標を検討した.下肢重症度分類にはFontaine分類を用い,I・II度を軽症群(n = 80),III・IV度を重症群(n = 67)とした.検討因子は一般血液検査,およびPT,APTT,フィブリノーゲン,総コレステロール値を検討した.血液学的検査ではヘマトクリットの低下(39.9 v...

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Published inJapanese Journal of Vascular Surgery Vol. 17; no. 4; pp. 489 - 494
Main Authors 大澤, 晋, 佐野, 俊二, 三井, 秀也
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本血管外科学会 2008
JAPANESE SOCIETY FOR VASCULAR SURGERY
Subjects
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ISSN0918-6778
1881-767X
DOI10.11401/jsvs.17.489

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Summary:下肢閉塞性動脈硬化症(ASO)は動脈硬化疾患の増加に伴い疾患数も増えてきたが,急性増悪を予知する血液凝固学的な指標はこれまでになかった.当院にて1993年 6 月から2006年12月の間に観血的治療,または血管内治療を行ったASO患者147例に対し治療前状態の評価を行い,ASOに対する日常診療で有用な増悪予知の指標を検討した.下肢重症度分類にはFontaine分類を用い,I・II度を軽症群(n = 80),III・IV度を重症群(n = 67)とした.検討因子は一般血液検査,およびPT,APTT,フィブリノーゲン,総コレステロール値を検討した.血液学的検査ではヘマトクリットの低下(39.9 vs 35.5(%),p < 0.01),およびフィブリノーゲンの増加(379 vs 479(mg / dl),p < 0.01)を認めた.相関分析では,ヘマトクリット値に有意な負の相関(r = 0.429,p < 0.001)を,また血小板数(r = 0.331,p < 0.001),フィブリノーゲン(r = 0.440,p < 0.001)に有意な正の相関を認めた.二項ロジスティック回帰分析を行った結果,ヘマトクリット(OR 0.882,p < 0.01)とフィブリノーゲン(OR 1.003,p < 0.05)に有意差を認めた.ASOの診断補助にヘマトクリット,フィブリノーゲンを取り入れることでASOにおける高リスク群を抽出できる可能性が示唆された.
ISSN:0918-6778
1881-767X
DOI:10.11401/jsvs.17.489