マウス下肢虚血モデルにおけるTNF-α欠損による血流改善効果TNF-αと血管新生

Tumor necrosis factor-alpha (TNF-α) は炎症性サイトカインの一つで, in vivo, in vitroで血管新生を促進あるいは抑制することが報告されている.その中で, 動物実験では虚血下肢にTNF-αアンタゴニストを筋肉注射し, 局所的にTNF-α作用を抑制し, 虚血下肢の血流改善効果が得られたことが報告されているが, 全身的なTNF-α欠損による虚血下肢の血流改善効果についての報告はない.今回, TNF-αノックアウトマウス (KO) を用い虚血下肢の血流改善効果の検討を行った.実験には10~12週齢 (25~30g) の野生型 (balb/c) マウス...

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Published in昭和医学会雑誌 Vol. 67; no. 2; pp. 126 - 133
Main Authors 佐藤, 貴俊, 鈴木, 洋, 中町, 智哉, 礒, 良崇, 木庭, 新治, 塩田, 清二, 楠山, 太郎, 大滝, 博和, 正司, 真, 下司, 映一, 片桐, 敬, 佐藤, 龍次, 大森, 康歳, 早田, 輝子, 関川, 賢二
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 昭和大学学士会 28.04.2007
Subjects
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ISSN0037-4342
2185-0976
DOI10.14930/jsma1939.67.126

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Summary:Tumor necrosis factor-alpha (TNF-α) は炎症性サイトカインの一つで, in vivo, in vitroで血管新生を促進あるいは抑制することが報告されている.その中で, 動物実験では虚血下肢にTNF-αアンタゴニストを筋肉注射し, 局所的にTNF-α作用を抑制し, 虚血下肢の血流改善効果が得られたことが報告されているが, 全身的なTNF-α欠損による虚血下肢の血流改善効果についての報告はない.今回, TNF-αノックアウトマウス (KO) を用い虚血下肢の血流改善効果の検討を行った.実験には10~12週齢 (25~30g) の野生型 (balb/c) マウス (WT, n=9) .KO (n=12) を使用した.鼠径部を切開し大腿動脈の近位部, 遠位部を結紮, 切除し下肢虚血モデルを作成した.結紮前, 直後, 1週, 2週, 4週後に下肢血流をレーザードップラー (LDPI) で近位部, 遠位部に分け経時的に測定した.結紮前, 1週。4週後にWT, KOを屠殺採血し, 血清サイトカイン濃度 (TNF-α, 血管内皮細胞増殖因子 (VEGF) ) をELISA法で測定した.4週後の虚血組織を免疫組織学的解析で評価した.LDPIではWT, KOともに下肢血流は漸増し, 近位部血流は2週後でKOで有意に改善し (WT53.9±17.1%, KO84.7±27.8%, p<o.ol) , 4週後でKOで有意に改善した (WT67.0±13.7%, KO96.8±22.6%, p<0.005) .また, 遠位部でも4週後でKOで有意に改善した (KO71.4±25.3%, WT51.8±11.5%, p<0.05) .免疫組織学的解析では, Capillary (p<0.05) , Arteriole density (p<0.005) ともKOで有意に多く.Mac-3, TUNEL陽性細胞数ともKOで有意に少なかった (p<0.0001) .ELISA法では, 血清TNF-α濃度は, WTで1週後で結紮前と比べ有意に上昇し (p<0.05) , 4週後で結紮前と同等にまで低下した.一方, 血清VEGF濃度はKOで結紮前から4週後まで一定であったのに対して, WTでは漸減し, 4週後でKOで有意に高値であった (p<0.001) .TNF-αの全身的欠損により, VEGF濃度の低下の抑制や炎症やアポトーシスの抑制により血管新生が促進し, マウスの下肢虚血での血流改善が促進したと考えられた.
ISSN:0037-4342
2185-0976
DOI:10.14930/jsma1939.67.126