Thy-1分子が歯肉線維芽細胞のコラーゲン貧食に及ぼす作用

Thy-1は25-37kDaの免疫グロブリンスーパーファミリーに属する糖タンパク質で, 細胞膜貫通領域を有さず, 細胞膜に存在するglycosyl-phosphatidylinosito1 (GPI) 分子と結合することにより細胞膜に繋がれている.この分子は多くの細胞種で発現しており, 細胞接着, 遊走, 増殖などの様々な細胞機能に関わるため, 細胞細胞間や細胞細胞外基質問の相互関係の重要な制御因子であると考えられている.本研究では, Thy-1がヒト歯肉線維芽細胞 (HGF) のコラーゲン貧食に及ぼす作用とその機序について検討した.HGFからmagnetic cell sortingでThy...

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Published inDental Medicine Research Vol. 28; no. 2; pp. 77 - 86
Main Authors 高野, 顕一, 村山, 怜一郎, 山本, 松男, 小林, 誠, 宮田, 昌和
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 昭和大学・昭和歯学会 2008
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ISSN1882-0719
2186-540X
DOI10.7881/dentalmedres2008.28.77

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Summary:Thy-1は25-37kDaの免疫グロブリンスーパーファミリーに属する糖タンパク質で, 細胞膜貫通領域を有さず, 細胞膜に存在するglycosyl-phosphatidylinosito1 (GPI) 分子と結合することにより細胞膜に繋がれている.この分子は多くの細胞種で発現しており, 細胞接着, 遊走, 増殖などの様々な細胞機能に関わるため, 細胞細胞間や細胞細胞外基質問の相互関係の重要な制御因子であると考えられている.本研究では, Thy-1がヒト歯肉線維芽細胞 (HGF) のコラーゲン貧食に及ぼす作用とその機序について検討した.HGFからmagnetic cell sortingでThy-1陽性細胞率が高い細胞集団 (Thy-1HighHGF) とThy-1陽性細胞率が低い集団 (Thy-1lowHGF) を分取し, コラーゲンでコートした蛍光発色ポリスチレンビーズ (コラーゲンビーズ) と共に培養後, コラーゲンビーズの付着を顕微鏡下で算定し, さらにコラーゲンビーズの貧食をFlowCytometerで評価した.また, HGFを抗Thy-1抗体 (ASO2) とphosphatidy1-inositol-3kinase (PI3K) 阻害薬あるいは細胞骨格阻害薬で前処理後, コラーゲンビーズと共に培養した.その後, Aktのリン酸化をウェスタンブロッティングで, アクチン細胞骨格の変化をrhodamine-phalloidin染色で確認し, さらにコラーゲンビーズの付着能と貧食能を評価した.その結果, HGFから分取したThy-1HighHGF (Thy-1陽性細胞率90%以上) はThy-1lowHGF (Thy-1陽性細胞率10%以下) と比較して, コラーゲンビーズの付着能と貧食能が有意に高かった.また, HGFをASO2で処理すると, アクチン細胞骨格の再構成とAktのリン酸化が誘導され, またその後のコラーゲンビーズの付着と貧食が促進された.さらに, PI3K阻害薬あるいは細胞骨格阻害薬はこれらのASO2の作用を抑制した.したがって, Thy-1の発現はHGFにおけるアクチン細胞骨格の維持と恒常的なコラーゲンの貧食に関与しており, 一方, 抗Thy-1抗体 (ASO2) の刺激を受けたHGFでは, Thy-1を介して細胞内にシグナルが伝達され, PI3K/Aktの活性化により細胞骨格の変化とコラーゲンの貧食の促進が誘導されると考えられる
ISSN:1882-0719
2186-540X
DOI:10.7881/dentalmedres2008.28.77