成人脳性麻痺者の低体重および過体重、骨粗鬆症、サルコペニアの割合と粗大運動能力分類システムごとの特徴

【はじめに、目的】成人脳性麻痺 (CP)者における低体重およ び過体重は、心大血管疾患など生活習慣病のリスクを高め、骨粗鬆症、サルコペニアは骨折や転倒などの有害事象を引き起こす可能性がある。これらの有害事象を予防するためには、生涯的な健康管理が必要と考えられるが、実際に成人CP者における低体重および過体重、骨粗鬆症、サルコペニアの割合やその特徴は明らかとなっていない。そこで、本研究は成人CP者の粗大運動能力分類システム (Gross Motor Function Classification System:GMFCS)に焦点を当て、成人CP者における低体重および過体重、骨粗鬆症、サルコペニアの...

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Published in小児理学療法学 Vol. 2; no. Supplement_1; p. 134
Main Authors 佐藤, 優衣, 田代, 英之, 広崎, 蒼大, 土岐, めぐみ, 小塚, 直樹
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本小児理学療法学会 31.03.2024
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Summary:【はじめに、目的】成人脳性麻痺 (CP)者における低体重およ び過体重は、心大血管疾患など生活習慣病のリスクを高め、骨粗鬆症、サルコペニアは骨折や転倒などの有害事象を引き起こす可能性がある。これらの有害事象を予防するためには、生涯的な健康管理が必要と考えられるが、実際に成人CP者における低体重および過体重、骨粗鬆症、サルコペニアの割合やその特徴は明らかとなっていない。そこで、本研究は成人CP者の粗大運動能力分類システム (Gross Motor Function Classification System:GMFCS)に焦点を当て、成人CP者における低体重および過体重、骨粗鬆症、サルコペニアの割合とGMFCSレベルごとの特徴を検討した。 【方法】対象者は18歳以上の成人CP者33名とし、脳性麻痺以外の神経、整形、内科疾患を有している者は除外した。低体重および過体重の指標には、体格指数 (BMI)を用い、低体重 (<18.5 kg/m2)、標準 (18.5~<25 kg/m2)、過体重 (≦25 kg/m2)の割合を算出した。骨粗鬆症の指標には、若年成人との比較値であるTスコアを用い、超音波骨密度測定装置 (日立製作所)にて測定した。Tスコアが80%未満の場合を骨粗鬆症とした。また、サルコペニアの指標には、握力および骨格筋指数 (SMI)を用い、握力はデジタル握力計 (竹井機器工業)、骨格筋量はIn Body S10 (In body社)にて測定した。Asian Working Group for Sarcopeniaの基準を参考とし、男性は握力<26kgかつSMI<7.0kg/m2、女性は握力<18kgかつSMI<5.7kg/m2であ る場合をサルコペニアとした。対象者をGMFCSレベルⅠ/Ⅱ群、 Ⅲ群、Ⅳ群に分類し、各群における低体重および過体重、骨粗 鬆症、サルコペニアの割合をχ2独立性の検定にて比較した。 また、各群の男女比と年齢の違いを確認するためχ2独立性の検定および一元配置分散分析を用いて比較した。統計処理は SPSS (ver. 25)を用い、危険率は5%とした。 【結果】対象者は33名 (35.2±13.7歳、男:女=12:21、 GMFCSレベルⅠ:Ⅱ:Ⅲ:Ⅳ=1:11:10:11)であった。BMIによる分類の割合は、低体重9名 (27.3%、Ⅱ:4名、Ⅳ:5名)、標準18名 (54.5%、Ⅰ:1名、Ⅱ:6名、Ⅲ:6名、Ⅳ:5名)、 肥満6名 (18.2%、Ⅱ:1名、Ⅲ:4名、Ⅳ:1名)であった。また、骨粗鬆症は16名 (48.5%、Ⅱ:2名、Ⅲ:6名、Ⅳ:8名)、サル コペニアは14名 (42.4%、Ⅱ:4名、Ⅲ:3名、Ⅳ:7名)であった。各群の低体重および過体重、サルコペニアの割合に有意差は認められなかった。一方で、骨粗鬆症の割合はGMFCSレベル Ⅰ/Ⅱ群と比較し、Ⅲ群、Ⅳ群で有意に高かった (p=0.018)。また、各群の男女比と年齢に有意差は認められなかった。 【考察】本研究で対象となった成人CP者では骨粗鬆症、サルコペニアの割合が全体の4~5割程度を占めており、成人CP者のより注意深い健康管理が重要と考える。また、骨粗鬆症の割合は身体機能障害が重症なほど高い傾向にあり、高齢者と同様に日常的な身体活動などが影響している可能性がある。 【倫理的配慮】本研究は、事前に札幌医科大学倫理委員会および札幌医科大学附属病院倫理委員会の承認を受けた上で実施した (承認番号1-2-29、312-3509)。対象者には口頭と文書で研究内容を十分に説明し、研究協力同意書へのサインにて同意を得た。また、全ての対象者に同意後も撤回が可能であることを伝えた。
ISSN:2758-6456
DOI:10.60187/jjppt.2.Supplement_1_134