養育里親における活動満足感と活動負担感の関連要因:横断研究
目的 本研究は養育里親を対象に,活動満足感および活動負担感に関連する要因を男女別に検討することを目的とした。方法 全国66か所中,協力が得られた32か所の地域里親会に所属する養育里親2,142人を対象に調査を実施した。回答者のうち,データ欠損がなく,里子の受託経験がある者を分析対象者とした。調査内容は,基本属性,養育里親歴,実子の有無,経験した里子(年代,被虐待経験,障害の有無),児童相談所(以下,児相)への満足度,近隣住民との付き合い,近隣への里親であることの公表,友人・里親仲間との付き合い,地区活動,地域里親会の参加状況等を尋ね,地域要因として市町村レベルの居住地人口を把握した。活動満足感...
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Published in | 日本公衆衛生雑誌 Vol. 70; no. 10; pp. 708 - 717 |
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Main Authors | , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本公衆衛生学会
15.10.2023
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Subjects | |
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ISSN | 0546-1766 2187-8986 |
DOI | 10.11236/jph.22-112 |
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Summary: | 目的 本研究は養育里親を対象に,活動満足感および活動負担感に関連する要因を男女別に検討することを目的とした。方法 全国66か所中,協力が得られた32か所の地域里親会に所属する養育里親2,142人を対象に調査を実施した。回答者のうち,データ欠損がなく,里子の受託経験がある者を分析対象者とした。調査内容は,基本属性,養育里親歴,実子の有無,経験した里子(年代,被虐待経験,障害の有無),児童相談所(以下,児相)への満足度,近隣住民との付き合い,近隣への里親であることの公表,友人・里親仲間との付き合い,地区活動,地域里親会の参加状況等を尋ね,地域要因として市町村レベルの居住地人口を把握した。活動満足感および活動負担感はそれぞれ8項目と6項目の質問を作成し4件法で尋ねた。分析は,活動満足感,活動負担感の合計得点を中央値で高低2群に分けて従属変数とし,単変量解析で有意差のあった変数を独立変数として多重ロジスティック回帰分析を行った。結果 1,052人から回答が得られ(回収率49.1%),752人が分析対象者となった。男性247人(32.8%),女性505人(67.2%)であった。多重ロジスティック回帰分析の結果,男性は,児相への満足度の高さと活動満足感の高さ,活動負担感の低さに有意な関連が認められた。女性は,養育里親歴が10年未満,乳児の受託経験あり,里親会参加ありが活動満足感の高さと,実子あり,障害のある里子の受託経験,児相への満足度の高さ,地区活動参加ありが活動負担感の低さと有意な関連が認められた。結論 養育里親の活動満足感と活動負担感の関連要因は男女で異なっていたが,児相への満足度は男女双方の関連要因であり,里親支援において児相の役割が大きいことがあらためて示唆された。里親の活動満足感の向上や活動負担感の軽減には,児相の専門的支援や丁寧な関わりが重要である。児相や里親会による里親支援がさらに充実するには,自治体の子育て支援部門等を中心に,里親支援体制も包含した子育て世代包括ケアの在り方を検討する必要がある。 |
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ISSN: | 0546-1766 2187-8986 |
DOI: | 10.11236/jph.22-112 |