Wistar-Kyotoラット実験的腎障害におけるアジュバント前投与の影響について

免疫賦活剤であるcomplete adjuvant (CA) をWistar-Kyoto (WKY) ラットに前処理し, puromycin aminonucleoside (PAN) 腎症と微量のnephrotoxic serum (NTS) によるNTS腎炎への影響について検討を行った.WKYラットにCA (CA群) , コントロールとしてphosphate-buffered saline (PBS) (PBS群) を皮内注射し, それぞれに14日後にPAN (20mg) を1回腹腔内投与する群と, NTS (1.25, μl) 1回静脈内投与する群を作製し, 14日目までの蛋白尿と腎組織...

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Published in昭和医学会雑誌 Vol. 65; no. 1; pp. 55 - 67
Main Authors 加藤, 謙一, 柴田, 孝則, 向井, 一光, 杉崎, 徹三
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 昭和大学学士会 2005
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Summary:免疫賦活剤であるcomplete adjuvant (CA) をWistar-Kyoto (WKY) ラットに前処理し, puromycin aminonucleoside (PAN) 腎症と微量のnephrotoxic serum (NTS) によるNTS腎炎への影響について検討を行った.WKYラットにCA (CA群) , コントロールとしてphosphate-buffered saline (PBS) (PBS群) を皮内注射し, それぞれに14日後にPAN (20mg) を1回腹腔内投与する群と, NTS (1.25, μl) 1回静脈内投与する群を作製し, 14日目までの蛋白尿と腎組織の免疫病理学的検討を行った.CA群とPBS群へのPAN投与では両群に病的蛋白尿を認め, 腎組織所見では, 尿細管腔内の円柱と間質の細胞浸潤を認めたが, 両群間に有意差を認めなかった.一方, 両群に対するNTS投与では, CA群では病的蛋白尿が2日で出現し, 14日で平均196.1mg/日と高度となったのに対し, PBS群では軽微な蛋白尿を認めるのみであった.腎組織所見では, CA群に4日で糸球体に半月体が出現し, 14日で半月体形成率は62.7%となった.PBS群の半月体形成率は7日の12.7%をピークとし, 以後減少した.蛍光抗体法所見上, 両群間に有意差なく, 糸球体係蹄に沿いラビットIgGの線状沈着を認めたが, ラットIgGとC3は認めなかった.免疫組織化学的染色による細胞マーカーの染色では, CA群では糸球体にマクロファージマーカーであるED-1陽性細胞とTリンパ球マーカーのCD3陽性細胞の顕著な浸潤を認めた.一方PBS群では, 上述の細胞をわずかに認めるのみであった.内皮細胞マーカーであるRECA-1は, 両群とも染色性が消失し, その後CA群ではその回復が遅れたが, PBS群では速やかな回復を認めた.WKYラットにおけるCA前処置はPAN腎症には影響を与えなかった.一方, NTS腎炎に対しては, コントロールでは極めて軽度の腎炎を起こす微量のNTSにもかかわらず, 糸球体への顕著なマクロファージとTリンパ球の浸潤, 高頻度の半月体形成を伴う増殖性糸球体腎炎を誘導し, 病変は14日目まで進行した.その原因として糸球体基底膜に結合したラビットIgGとこれら活性化炎症細胞との相互反応によるものが考えられ, ヒト腎炎の発症あるいは急性増悪の機序を考える上で興味ある所見と考えられた.
ISSN:0037-4342
2185-0976
DOI:10.14930/jsma1939.65.55