当帰湯が有効であった呑気症の1例
呑気症には気虚,気滞の改善を図る方剤が用いられてきたが,今回,脾陽虚,肝気滞に注目して治療することで軽快した症例を経験した。症例は75歳,女性。胃部不快感の精査により萎縮性胃炎と診断され,制酸剤,プロトンポンプインヒビターなどで加療したが改善しなかった。腹部膨満,曖気も出現,増悪したため,漢方治療を希望した。気滞とともに裏寒も存在したことから,理気,温補を十分に発揮できる当帰湯を投与し,順調に回復した。呑気症の病態は気滞を中心にして気虚の併発が一般的と考えられる。しかし,本症例のように陽虚をもつ場合には,温補をしっかり行える方剤が必要であり,当帰湯はその候補と考えられる。当帰湯は主治として絞痛...
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Published in | 日本東洋医学雑誌 Vol. 75; no. 1; pp. 18 - 24 |
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Main Authors | , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本東洋医学会
2024
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Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 0287-4857 1882-756X |
DOI | 10.3937/kampomed.75.18 |
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Summary: | 呑気症には気虚,気滞の改善を図る方剤が用いられてきたが,今回,脾陽虚,肝気滞に注目して治療することで軽快した症例を経験した。症例は75歳,女性。胃部不快感の精査により萎縮性胃炎と診断され,制酸剤,プロトンポンプインヒビターなどで加療したが改善しなかった。腹部膨満,曖気も出現,増悪したため,漢方治療を希望した。気滞とともに裏寒も存在したことから,理気,温補を十分に発揮できる当帰湯を投与し,順調に回復した。呑気症の病態は気滞を中心にして気虚の併発が一般的と考えられる。しかし,本症例のように陽虚をもつ場合には,温補をしっかり行える方剤が必要であり,当帰湯はその候補と考えられる。当帰湯は主治として絞痛が挙げられ,腹痛,胸痛に対してしばしば投与される。本症例も病態がさらに悪化した場合には腹痛をきたした可能性もあるが,疼痛に拘泥せず気滞,陽虚をきたす場合には本方の投与を考慮することも重要と考えられる。 |
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ISSN: | 0287-4857 1882-756X |
DOI: | 10.3937/kampomed.75.18 |