全国自治体病院対象の医療通訳者ニーズ調査

目的 全国自治体病院を対象に外国人患者の受入実績とリスクマネジメントの観点から,病床規模別に医療通訳者のニーズを明らかにする。方法 2016年2月に全国自治体病院894病院を対象に郵送法質問紙調査を実施した。調査項目は,外国人患者の受入実績,医療通訳者ニーズ,言葉の問題によるインシデントとした。インシデント事例は国立大学附属病院医療安全管理協議会のインシデント影響度分類(レベル0~5・その他)を用いた。統計解析は病床規模別ペアワイズ法,2変数の関連はχ2検定などで分析した。本研究では小病院を20~99床,中病院を100~399床,大病院を400床以上とした。結果 質問紙の回収率は小病院が30....

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Published in日本公衆衛生雑誌 Vol. 64; no. 11; pp. 672 - 683
Main Authors 濱井, 妙子, 永田, 文子, 西川, 浩昭
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本公衆衛生学会 2017
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Summary:目的 全国自治体病院を対象に外国人患者の受入実績とリスクマネジメントの観点から,病床規模別に医療通訳者のニーズを明らかにする。方法 2016年2月に全国自治体病院894病院を対象に郵送法質問紙調査を実施した。調査項目は,外国人患者の受入実績,医療通訳者ニーズ,言葉の問題によるインシデントとした。インシデント事例は国立大学附属病院医療安全管理協議会のインシデント影響度分類(レベル0~5・その他)を用いた。統計解析は病床規模別ペアワイズ法,2変数の関連はχ2検定などで分析した。本研究では小病院を20~99床,中病院を100~399床,大病院を400床以上とした。結果 質問紙の回収率は小病院が30.1%,中病院が32.5%,大病院が32.8%であった。過去1年間に外国人患者を受け入れた病院は84.9%~97.6%の範囲であった。急患・救急,入院,検査,手術の受入は中・大病院が多かった。日本語ができない患者への対応は,患者が連れてきた通訳者を利用している病院が84.3%~86.7%の範囲で多かった。患者が連れてくる通訳者が正確に通訳をしていると考えている病院は小病院が66.7%,中病院は58.5%,大病院は44.7%であった。診療報酬で認められたら医療通訳者を利用すると考えている病院は83病院のうち,小病院が31.6%,中病院は76.5%,大病院は92.3%であった(P<0.001)。外国人患者を受け入れるために専門の訓練を受けた医療通訳者が必要と考えている病院は小病院が75.7%,中病院は84.7%,大病院は94.6%であった(P=0.014)。必要と思う理由は,「医療リスクを低減するため」が81.1%~94.3%の範囲で最も多かった。インシデントは274病院のうち13病院(4.7%),17事例報告された。影響度は,レベル0がMRI中止など3事例,レベル1が無断離院や点滴自己抜去など9事例,レベル2が墜落分娩1事例,レベル5が死亡1事例,その他が3事例あった。小病院から報告はなかったが,外国人患者数が少ない病院からは報告されていた。結論 医療通訳者ニーズは,外国人患者数と来院目的の観点からは小病院で顕在化されておらず,中・大病院で多かった。リスクマネジメントの観点からは,小・中・大病院において言葉の問題が患者の安全を脅かすリスクがあり,訓練を受けた医療通訳者のニーズはあることが示唆された。
ISSN:0546-1766
2187-8986
DOI:10.11236/jph.64.11_672