Functional Reach Testの見積もり誤差値は要介護高齢者の転倒に影響する

【はじめに、目的】高齢者の転倒要因に自己の身体能力の誤認識(見積もり誤差値)が注目されている。見積もり誤差値が大きいことで、実際の身体能力と身体能力の認識とに乖離が生じ、能力に見合った運動戦略が取れない場合に転倒に至る可能性が高い。見積もり誤差値の評価にはFunctional Reach Test(FRT)が用いられており、健常高齢者を対象とした先行研究では、FRT見積もり誤差値の大きさが転倒に影響すると報告されている。高齢者の見積もり誤差値は身体機能や認知機能の低下を認める者ほど大きくなることが示されており、身体機能・認知機能がより低下している要介護高齢者の転倒にも影響する可能性が高い。しか...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本予防理学療法学会 学術大会プログラム・抄録集 p. 85
Main Authors 池田, 圭介, 芦澤, 遼太
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本予防理学療法学会 01.12.2022
Subjects
Online AccessGet full text

Cover

Loading…
More Information
Summary:【はじめに、目的】高齢者の転倒要因に自己の身体能力の誤認識(見積もり誤差値)が注目されている。見積もり誤差値が大きいことで、実際の身体能力と身体能力の認識とに乖離が生じ、能力に見合った運動戦略が取れない場合に転倒に至る可能性が高い。見積もり誤差値の評価にはFunctional Reach Test(FRT)が用いられており、健常高齢者を対象とした先行研究では、FRT見積もり誤差値の大きさが転倒に影響すると報告されている。高齢者の見積もり誤差値は身体機能や認知機能の低下を認める者ほど大きくなることが示されており、身体機能・認知機能がより低下している要介護高齢者の転倒にも影響する可能性が高い。しかし要介護高齢者のみを対象に見積もり誤差値と転倒の関係性を調査した研究は不十分であり、見積もり誤差値が転倒に影響するかどうかは明らかではない。本研究の目的は、要介護高齢者のFRT見積もり誤差値の大きさが転倒に影響するかを明らかにすることであった。【方法】研究デザインは前向きコホート研究であった。対象者は当施設のデイケアを利用し、Mini-Mental State Examination(MMSE) が18点以上かつ歩行が自立している要介護高齢者31例(年齢83.1±8.8歳、男性14例)とした。ベースライン調査として転倒と関連 する可能性がある年齢、性別、要介護度、服薬数を診療録より抽出し、MMSE、FRT、FRT見積もり誤差値、Timed Up & Go Test、Short Physical Performance Battery、日本語版Falls Efficacy Scale(FES)を評価した。転倒はベースライン調査から6ヵ月間の転倒の有無を転倒カレンダーを用いて調査した。FRT見積もり誤差値は、対象者の前方から目標物が接近し、リーチ可能と判断した距離を予測値とし、FRT実測値との差を絶対値で記録した。統計解析は転倒群と非転倒群の比較を対応のないt検定とX2検定を用いて行い、次に転倒に影響する因子を明らかにするために、従属変数を転倒の有無(有:1、無:0)、独立変数を群間比較で有意差を認めた項目としたロジスティック回帰分析を行った。【結果】転倒群は8例(25%)であった。群間比較の結果、転倒群は非転倒群と比べて女性が有意に多く、FRT見積もり誤差値が有意に高かった。FRT、FESの値は有意に低かった。従属変数を転倒の有無、独立変数を性別、FRT、FRT見積もり誤差値としたロジスティック回帰分析の結果、FRT見積もり誤差値が抽出された(オッズ比:1.48、95%信頼区間:1.02-2.15、p=0.036)。【結論】FRT見積もり誤差値の大きさが要介護高齢者の転倒に影響することが示された。要介護高齢者の転倒リスクの評価として見積もり誤差値にも着目する必要性が示唆された。【倫理的配慮,説明と同意】本研究は、聖隷三方原病院倫理委員会の承認を得て実施した(研究番号:第21-11)。対象者に本研究の概要と目的、個人情報の保護など十分な説明を行い、口頭及び書面にて同意を得た。
ISSN:2758-7983
DOI:10.57304/jsptpsuppl.1.Suppl.No.2.0_85