カニクイザル大腿二頭筋の筋線維構成について
大腿二頭筋は, 四足歩行においては体の推進に働く筋としてサルではよく発達することが知られている.筆者は筋線維構成の面からこれを検討したいと考え, カニクイザル10頭 (♂4, ♀6) の大腿二頭筋の断面の筋線維を同一個体の他筋と比較した.染色はSudan Black B染色によった.結果は次の如くである.1.筋重量については, 比較したカニクイザルの棘腕諸筋, 三角筋および前脛骨筋よりも遙かに大で, 雄の方が雌よりも大で, 筋線維の太さとの間に相関関係が見られた.2.1mm2中の筋線維数は, サルの他筋およびこれまでに報告されたヒトその他の筋に比べて著しく少で, 雄の方が雌よりも少なかった.従...
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Published in | 昭和医学会雑誌 Vol. 43; no. 1; pp. 55 - 63 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
昭和大学学士会
01.02.1983
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ISSN | 0037-4342 2185-0976 |
DOI | 10.14930/jsma1939.43.55 |
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Summary: | 大腿二頭筋は, 四足歩行においては体の推進に働く筋としてサルではよく発達することが知られている.筆者は筋線維構成の面からこれを検討したいと考え, カニクイザル10頭 (♂4, ♀6) の大腿二頭筋の断面の筋線維を同一個体の他筋と比較した.染色はSudan Black B染色によった.結果は次の如くである.1.筋重量については, 比較したカニクイザルの棘腕諸筋, 三角筋および前脛骨筋よりも遙かに大で, 雄の方が雌よりも大で, 筋線維の太さとの間に相関関係が見られた.2.1mm2中の筋線維数は, サルの他筋およびこれまでに報告されたヒトその他の筋に比べて著しく少で, 雄の方が雌よりも少なかった.従って, 筋線維総数は前脛骨筋, 三角筋よりも断面積が大であるにもかかわらず逆に少なかった.3.Sudan Black B染色によって分別した3筋線維の比率を見ると, 白筋線維が著しく多い筋群に属したが, 中間筋線維, 赤筋線維の順にこれに次ぎ雌雄間の差は見られなかった.4.3筋線維のそれぞれの太さの平均値は, 白筋線維, 中間筋線維, 赤筋線維の順に大で, 他の筋と比べて著しく大であった.5.以上の事から, カニクイザル大腿二頭筋は白筋線維を中心とした太い筋線維から成り筋線維間結合組織が多くて, 収縮にあたって強くて大きいカを出すに適した筋線維構成をていると考えられた. |
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ISSN: | 0037-4342 2185-0976 |
DOI: | 10.14930/jsma1939.43.55 |