小樽の地質と石材

北海道から東北日本,西南日本の日本海側,およびフォッサマグナ等のいわゆる「グリーンタフ地帯」では新生代後期に水底堆積した水中火山岩類が広く分布する.このうち凝灰岩は各地で石材として利用されてきた.北海道南西部には中新世末に形成された水中火山岩類が広く分布している.小樽市ではこの水中火山のうち,特に地場の「凝灰岩」を石材として用いた石造建造物が明治初期から昭和初期にかけて数多く建造された.現在,それらの建造物が形成する景観は重要な観光資源となっている.本巡検では,明治期に急速に発展した都市形成を支えた石材「小樽軟石」と,その石材の供給源である水中火山活動による地質とを関連付けて観察する.これらは...

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Published in地質学雑誌 Vol. 125; no. 5; pp. 387 - 402
Main Authors 仁科, 健二, 松田, 義章, 松枝, 大治, 竹内, 勝治, 大鐘, 卓哉, 菅原, 慶郎, 高見, 雅三, 北嶋, 徹
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本地質学会 15.05.2019
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Summary:北海道から東北日本,西南日本の日本海側,およびフォッサマグナ等のいわゆる「グリーンタフ地帯」では新生代後期に水底堆積した水中火山岩類が広く分布する.このうち凝灰岩は各地で石材として利用されてきた.北海道南西部には中新世末に形成された水中火山岩類が広く分布している.小樽市ではこの水中火山のうち,特に地場の「凝灰岩」を石材として用いた石造建造物が明治初期から昭和初期にかけて数多く建造された.現在,それらの建造物が形成する景観は重要な観光資源となっている.本巡検では,明治期に急速に発展した都市形成を支えた石材「小樽軟石」と,その石材の供給源である水中火山活動による地質とを関連付けて観察する.これらはともに重要な観光資源でありながら,相互を関連させた議論はされてなかった.小樽市の歴史的石造建造物とこれを構成する石材,および急峻な海食崖からなる海岸景観を構成する中新世の水中火山岩類の巨大露頭を陸上と海上から観察したうえで,地域の地質と文化的基盤との関わりについて議論し,文化地質学的視点からの学びを核とするジオツーリズムの一例を提示する.
ISSN:0016-7630
1349-9963
DOI:10.5575/geosoc.2018.0073