高齢者の行動変容をナッジする

行動経済学研究において高齢者はナッジによるサポートを必要とする集団であることが示唆されるが,高齢者の意思決定を支援するナッジ理論はこれまで十分に開発されているとは言えない。筆者らは,後期高齢者を中心とした住居型コミュニティにおいて,高齢者の技術受容の課題を考慮したタブレット利用環境を構築し,ナッジメッセージがタブレット利用行動にもたらす影響を無作為化比較対照試験にて検証した。具体的にはタブレットの利用を促進する性質の異なる2種類のナッジメッセージ(締切強調・損失強調メッセージ,コミットメントナッジ)を介入とし,介入後16週間を観察期間とした。その結果,それぞれのナッジメッセージの特性に応じた効...

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Published in医療と社会 Vol. 35; no. 1; pp. 81 - 92
Main Authors 山田, ゆかり, 福間, 真悟
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 医療科学研究所 28.04.2025
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ISSN0916-9202
1883-4477
DOI10.4091/iken.35-81

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Summary:行動経済学研究において高齢者はナッジによるサポートを必要とする集団であることが示唆されるが,高齢者の意思決定を支援するナッジ理論はこれまで十分に開発されているとは言えない。筆者らは,後期高齢者を中心とした住居型コミュニティにおいて,高齢者の技術受容の課題を考慮したタブレット利用環境を構築し,ナッジメッセージがタブレット利用行動にもたらす影響を無作為化比較対照試験にて検証した。具体的にはタブレットの利用を促進する性質の異なる2種類のナッジメッセージ(締切強調・損失強調メッセージ,コミットメントナッジ)を介入とし,介入後16週間を観察期間とした。その結果,それぞれのナッジメッセージの特性に応じた効果が認められたことから,行動経済学における従来の知見が後期高齢者にも適用可能であることが示唆された。また,この効果は男性高齢者によって牽引されたものであったことから,観察されたナッジメッセージの効果はナッジする「行動」の特性に大きく依存したことが示唆された。高齢者の介護予防を目指したナッジを効果的に活用するには,高齢者の視点にたち,関心をひきつける活動をどのように提案するかが重要であり,その上でナッジメッセージを適切に組み込むことで,より高い効果を期待できる。
ISSN:0916-9202
1883-4477
DOI:10.4091/iken.35-81