千葉県内の病院における看護職員確保の困難に関する実態調査
(緒言) 千葉県は人口10万対就業看護師数において全国第46位と低く(厚生労働省,2017),看護職員確保は千葉県の喫緊の課題である.病院の看護職員確保は,職員の採用と定着により成り立つ.看護師確保の課題がある病院への聞き取り調査で,新卒者や常勤の応募が少なく中途採用やパートで補充しているといった採用の困難があることが報告されている(森田ら,2012).看護職員の定着の指標とされる離職率は正規職員を対象に算出している(日本看護協会,2017).この離職率には表れない看護職員確保の困難も含め実態を明らかにする必要がある.(研究方法) 千葉県内の病院286施設を調査対象とし,自記式質問紙を送付し看...
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Published in | 千葉県立保健医療大学紀要 Vol. 11; no. 1; p. 1_77 |
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Main Authors | , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
千葉県立保健医療大学
31.03.2020
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Summary: | (緒言) 千葉県は人口10万対就業看護師数において全国第46位と低く(厚生労働省,2017),看護職員確保は千葉県の喫緊の課題である.病院の看護職員確保は,職員の採用と定着により成り立つ.看護師確保の課題がある病院への聞き取り調査で,新卒者や常勤の応募が少なく中途採用やパートで補充しているといった採用の困難があることが報告されている(森田ら,2012).看護職員の定着の指標とされる離職率は正規職員を対象に算出している(日本看護協会,2017).この離職率には表れない看護職員確保の困難も含め実態を明らかにする必要がある.(研究方法) 千葉県内の病院286施設を調査対象とし,自記式質問紙を送付し看護管理部門責任者または,それに準じる役職者に回答を依頼した.調査項目は,病院の属性(医療圏,開設者,病床規模等),看護職員採用意向,看護職員採用の困難,看護職員定着の困難,実施している採用活動,実施している定着対策等である.データ分析は,病院属性の記述統計,採用と定着の困難の程度と内容,採用活動・定着対策の単純集計,採用活動・定着対策の有無と採用と定着の困難の関係性をχ2検定や回帰分析を行った.分析にはJMP14.0を使 用した.(結果および考察) 回収数169人(回収率59.0%).回答者属性は,役職が看護部長125人(74.4%),医療圏が千葉47人(28.0%),開設者が医療法人117人(69.2%)総病床数が100~199床61人(36.1%)が最も多かった. 看護師の採用の困難は,あり121人(71.6%),48人(28.4%),定着の困難は,あり69人(40.8%),92人(54.4%)であった.採用の困難の内容は,「応募が少ない」86人(50.9%),「採用を辞退される」39人(23.1%)の順に多く,定着の困難の内容は,「仕事についていけない」36人(21.3%),「配属先になじめない」35人(20.7%)の順に多かった. 実施している採用活動は,「病院ホームページでの看護部紹介」137人(81.1%),「病院ホームページでの採用情報掲載」135人(79.9%),職員からの紹介133人(78.7%)の順に多く,定着対策は「育児介護休職制度」133人(78.7%),「代休と有給休暇の取得促進」129人(76.3%),「看護手順書・マニュアルの整備」126人(74.6%)の順に多かった. 病院の属性と採用の困難の有無の関係,属性と定着の困難の有無の関係を独立性のχ2検定したところ,開設者ではいずれも国・公立等,医療法人,その他で差があった(採用の困難;p=.001,定着の困難;p=.000).なお,採用の困難,定着の困難ともに医療法人,その他,国・公立等の順困難がある割合が多かった.病床規模では,採用の困難の有無との関係で「199床以下」「200~399床」「400床以上」の3群間で差があり(p=.004),400床未満のほうに困難がある割合が多かった. 採用活動のうち,「臨地実習の受け入れ」(p=.009)は困難がない方向に,「職業紹介業者の利用」(p=.009)「職員からの紹介」(p=.021)は困難がある方向に関連があり,定着対策のうち,「看護手順書・マニュアルの整備」(p=.043)は困難がない方向に,「夜勤専従勤務の導入」(p=.001)は困難がある方向に関連があった(いずれもロジスティック回帰分析・ステップワイズ法による変数選択実施). 本研究で千葉県内の病院の7割以上に採用の困難,4割以上に定着の困難があると示唆された.「臨地実習の受け入れ」は病院を知ってもらう機会になり採用の困難の低さと,「看護手順書・マニュアルの整備」はそこでのやり方を示すことから定着の困難の低さとそれぞれ関連があると考えられた.また困難の低さからこれらの活動・対策を実施できるとも言える.(倫理規定) 本研究は,千葉県立保健医療大学研究等倫理委員会の承認を得て実施した.(申請番号:2018-33)(利益相反) 本研究における開示すべき利益相反はない. |
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ISSN: | 1884-9326 2433-5533 |
DOI: | 10.24624/cpu.11.1_1_77 |