後腹膜大量出血に対する動脈塞栓術後に生じた腹部コンパートメント症候群の1救命例

症例は72歳,女性。近医より後腹膜大量出血による出血性ショックの状態で転院搬送された。緊急血管造影検査で下膵十二指腸動脈からの持続的な出血を認め,塞栓術を施行しすみやかに循環動態は安定した。塞栓術後腹部コンパートメント症候群(abdominal compartment syndrome:以下,ACS) を発症したため緊急開腹血腫除去術を行い,全身状態は改善した。動脈性の大量出血による出血性ショックに対して,血管塞栓術は低侵襲で迅速に止血が得られるため効果的な治療法である。一方,大量の血腫が後腹膜または腹腔内に残存しACS発症のリスクが高いため,大量出血に対する塞栓術後にはACSを念頭に置き,診...

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Published in日本腹部救急医学会雑誌 Vol. 38; no. 1; pp. 105 - 108
Main Authors 鈴木, 優美, 佐伯, 悟三, 松島, 正哉, 平松, 聖史, 新井, 利幸
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本腹部救急医学会 31.01.2018
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Summary:症例は72歳,女性。近医より後腹膜大量出血による出血性ショックの状態で転院搬送された。緊急血管造影検査で下膵十二指腸動脈からの持続的な出血を認め,塞栓術を施行しすみやかに循環動態は安定した。塞栓術後腹部コンパートメント症候群(abdominal compartment syndrome:以下,ACS) を発症したため緊急開腹血腫除去術を行い,全身状態は改善した。動脈性の大量出血による出血性ショックに対して,血管塞栓術は低侵襲で迅速に止血が得られるため効果的な治療法である。一方,大量の血腫が後腹膜または腹腔内に残存しACS発症のリスクが高いため,大量出血に対する塞栓術後にはACSを念頭に置き,診療にあたることが重要である。
ISSN:1340-2242
1882-4781
DOI:10.11231/jaem.38.105