中高年者を対象とした地域の子育て支援行動尺度の開発

目的 母親の育児不安や孤立が問題となる中で,親だけでなく多様な人々が子育てに関わることの重要性が指摘されている。本研究は,中高年者を対象とした地域の子育て支援行動の測定尺度の開発をおこない,その信頼性・妥当性を検証した。 方法 先行研究と予備調査に基づき地域の子育て支援行動の概念化をおこない,尺度項目を選定した。次に,無作為抽出された首都圏の60~69歳の813人が回答した郵送調査において(回収率54%),支援行動のそれぞれについて,行動の頻度を 4 段階で評定してもらった。尺度の構成概念妥当性と信頼性は,確認的因子分析とクロンバックの信頼性係数により検討した。さらに,妥当性については,本尺度...

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Published in日本公衆衛生雑誌 Vol. 63; no. 3; pp. 101 - 112
Main Authors 藤原, 佳典, 小林, 江里香, 原田, 謙, 村山, 陽, 高橋, 知也, 深谷, 太郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本公衆衛生学会 2016
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ISSN0546-1766
2187-8986
DOI10.11236/jph.63.3_101

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Summary:目的 母親の育児不安や孤立が問題となる中で,親だけでなく多様な人々が子育てに関わることの重要性が指摘されている。本研究は,中高年者を対象とした地域の子育て支援行動の測定尺度の開発をおこない,その信頼性・妥当性を検証した。 方法 先行研究と予備調査に基づき地域の子育て支援行動の概念化をおこない,尺度項目を選定した。次に,無作為抽出された首都圏の60~69歳の813人が回答した郵送調査において(回収率54%),支援行動のそれぞれについて,行動の頻度を 4 段階で評定してもらった。尺度の構成概念妥当性と信頼性は,確認的因子分析とクロンバックの信頼性係数により検討した。さらに,妥当性については,本尺度と地域住民との交流頻度,次世代育成への関心を表す Generativity(世代性)尺度,子育て経験を反映した子ども数や孫との関わりの程度との間に想定されるような正の関連があるかを,相関係数および重回帰分析の結果により検討した。 結果 先行研究と予備調査により,地域の子育て支援行動には,「子どもの安全・健全な成長」,「親への手段的サポート」,「親への情緒的サポート」の 3 つの構成概念があることが明らかになった。これらを 3 因子とし,その上位に「地域の子育て支援」因子をおく 2 次因子分析のモデルの適合度を検討した結果,1 項目を除外したモデルの適合度が高く,残りの 7 項目での信頼性係数も高かった(α=0.87)。7 項目を合計した尺度得点は,地域住民との交流頻度,とくに子ども・子育て世代との交流,世代性,子ども数,孫の世話をしていることと,想定通りの有意な正の相関があった。重回帰分析の結果,尺度で測定された子育て支援行動は,子ども・子育て世代との交流頻度の多寡により説明される部分が大きいものの,交流頻度を調整しても,女性,孫の世話をしている人,世代性が高い人ほど得点が高かった。 結論 7 項目からなる「地域の子育て支援行動尺度」の信頼性・妥当性を確認した。より多様な地域・年齢層における本尺度の適用可能性と,本尺度で測定された子育て支援行動が子育て世代側に与える効果の検証が今後の課題である。
ISSN:0546-1766
2187-8986
DOI:10.11236/jph.63.3_101